従姉「Kちゃん」が亡くなったのは昨年の5月8日早暁、心筋梗塞による些か早い68歳の旅立ちでした。翌9日の前夜式、10日の葬儀式は、いずれもKちゃんの夫であり牧師であるAさんが司祭をつとめ、二人がともに長く働いた神戸の或る教会で執り行われました。
今年2月、夫君Aさんから電話がありました。「K子の葬儀には、たくさんの方にご参列をいただき、またお手紙はじめたくさんのお言葉をいただきました。一周忌に彼女の追想録 ”偲び草”を出したいと思います。K子について、〇〇さん(私のこと)も書いて下さいませんか」。
一周忌には都合で出席できませんでしたが、夫君から「〇〇さん(私)始めおよそ70人の方から寄稿がありました。まだ数人ぜひお寄せ頂きたい方がおられ ”偲び草 ”の発行は8月頃になります」とのメールがあり、親族からの寄稿の幾つかがメールに添付されていました。
境海峡をはさみ出雲半島を臨む
私と彼女は歳が少し離れていたため寄稿には私の知らない彼女がたくさん記されていました。
満州から引揚げ・・・
Kちゃんは、満州鉄道に勤めていた父親の四女として遼北省四平で生まれました。生まれた病院で敗戦を迎え、一家は命からがら一年に及ぶ逃避行の末、本土に引揚げました。途中、6歳の三女が背負って歩いた2歳の長男は栄養失調で亡くなりました(長女・次女は予め本土に残留)。
引揚げた舞鶴港で、米兵から全員が「頭からDDTを撒かれた」ことを前記6歳だった三女は印象的に覚えています、DDTは「本土の臭い」そのものだったと・・・。帰り着いた父の家は築185年の旧い家、そこで村会議員になった父親でしたが、3年後、41歳で病死します。
小児マヒ~養護施設寄宿
Kちゃん2歳の時、当時大流行した小児マヒ(ポリオ)に感染、命は救われたものの後遺症(びっこ)が残っていました。たいへん可愛いがった幼く足の不自由な娘を遺して逝く父親の無念は、如何ばかりだったでしょうか・・・。長男を亡くした引揚げにつづく大きな不幸でした。
彼女は、中学から整肢学園(養護学校)に寄宿しました。私は、母(彼女には叔母)に連れられ一度だけ学園を訪ねたことがあります。幼な心に、どこか侘しくもの哀しい施設に映りましたし、彼女にも笑顔は見られませんでした。帰り道、母が泣いていたことを憶えています。
高校から普通科へ
母は施設にいるKちゃんを見かね、「高校は普通科に」と勧めました。彼女も施設で自立心が強くなり「普通科進学」をめざしました。彼女の母親は危惧しましたが、意思を貫きました。普通科の高校に通うKちゃんを、私は「こんなによく笑う人?」と不思議に思っていました。
高校では文芸部と新聞部に所属、堀辰雄「風立ちぬ」を愛読し、軽井沢の堀の別荘を訪ねるほどのファンでした。やがて短大に進み銀行に勤めた頃、キリスト教会の日曜礼拝に通い始めました。「風立ちぬ」にも教会を訪ねる印象的なシーンがありますので、その影響かもしれません。
弓が浜(境港市)から大山を望む
出会いの場はキリスト教会
教会には、後の夫君Aさんも通っていました。彼は、大学卒業後、生きる目標を喪い数年・・・欧州各地を放浪していました。「放浪中よくお世話になった」のがキリスト教会だったからでしょうか、帰国して何となく行くようになった教会が、Kちゃんとの出会いの場となりました。
やがて二人は結ばれ一男一女に恵まれました。Aさんが牧師の資格を得て教会を任されると、彼女もまた銀行を退職、彼を支えるべく教会で懸命に働きました。とっても健康に見えましたし、信者さんの信頼は篤く、彼女の人生で最も輝く充実した年月であったことと思います。
花に埋もれ 旅立ちぬ
そんな最中の急変、突然の死・・・でした。悲しみを抑えた夫君Aさんの淡々とした司祭、息子と娘の涙でぼろぼろの挨拶・・・。繰返し歌われる讃美歌と引用される聖書の言葉は総てAさんが選びました。その意味と由来は私にはわからずとも、祭壇にいる彼女には総てわかったことでしょう。
Kちゃんの姉の寄稿は『妹は花に埋もれ 旅立ちぬ』・・・彼女にふさわしいタイトルでした。
【過去ログ目次一覧】
ごあいさつ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/7de1dfba556d627571b3a76d739e5d8c
腎がんのメモリー http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/bee90bf51656b2d38e95ee9c0a8dd9d2
旅行記 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/23d5db550b4853853d7e1a59dbea4b8e
閑話休題 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/c859a3480d132510c809d930cb326dfb
かんわきゅうだい http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a0b140d3616d89f2b5ea42346a7d80f0
吾輩も猫である1~40 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/58089c94db4126a1a491cd041749d5d4
吾輩も猫である41~80 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/dce7073c79b759aa9bc0707e4cf68e12
吾輩も猫である81~ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/f9672339825ecefa5d005066d046646f
今年2月、夫君Aさんから電話がありました。「K子の葬儀には、たくさんの方にご参列をいただき、またお手紙はじめたくさんのお言葉をいただきました。一周忌に彼女の追想録 ”偲び草”を出したいと思います。K子について、〇〇さん(私のこと)も書いて下さいませんか」。
一周忌には都合で出席できませんでしたが、夫君から「〇〇さん(私)始めおよそ70人の方から寄稿がありました。まだ数人ぜひお寄せ頂きたい方がおられ ”偲び草 ”の発行は8月頃になります」とのメールがあり、親族からの寄稿の幾つかがメールに添付されていました。
境海峡をはさみ出雲半島を臨む
私と彼女は歳が少し離れていたため寄稿には私の知らない彼女がたくさん記されていました。
満州から引揚げ・・・
Kちゃんは、満州鉄道に勤めていた父親の四女として遼北省四平で生まれました。生まれた病院で敗戦を迎え、一家は命からがら一年に及ぶ逃避行の末、本土に引揚げました。途中、6歳の三女が背負って歩いた2歳の長男は栄養失調で亡くなりました(長女・次女は予め本土に残留)。
引揚げた舞鶴港で、米兵から全員が「頭からDDTを撒かれた」ことを前記6歳だった三女は印象的に覚えています、DDTは「本土の臭い」そのものだったと・・・。帰り着いた父の家は築185年の旧い家、そこで村会議員になった父親でしたが、3年後、41歳で病死します。
小児マヒ~養護施設寄宿
Kちゃん2歳の時、当時大流行した小児マヒ(ポリオ)に感染、命は救われたものの後遺症(びっこ)が残っていました。たいへん可愛いがった幼く足の不自由な娘を遺して逝く父親の無念は、如何ばかりだったでしょうか・・・。長男を亡くした引揚げにつづく大きな不幸でした。
彼女は、中学から整肢学園(養護学校)に寄宿しました。私は、母(彼女には叔母)に連れられ一度だけ学園を訪ねたことがあります。幼な心に、どこか侘しくもの哀しい施設に映りましたし、彼女にも笑顔は見られませんでした。帰り道、母が泣いていたことを憶えています。
高校から普通科へ
母は施設にいるKちゃんを見かね、「高校は普通科に」と勧めました。彼女も施設で自立心が強くなり「普通科進学」をめざしました。彼女の母親は危惧しましたが、意思を貫きました。普通科の高校に通うKちゃんを、私は「こんなによく笑う人?」と不思議に思っていました。
高校では文芸部と新聞部に所属、堀辰雄「風立ちぬ」を愛読し、軽井沢の堀の別荘を訪ねるほどのファンでした。やがて短大に進み銀行に勤めた頃、キリスト教会の日曜礼拝に通い始めました。「風立ちぬ」にも教会を訪ねる印象的なシーンがありますので、その影響かもしれません。
弓が浜(境港市)から大山を望む
出会いの場はキリスト教会
教会には、後の夫君Aさんも通っていました。彼は、大学卒業後、生きる目標を喪い数年・・・欧州各地を放浪していました。「放浪中よくお世話になった」のがキリスト教会だったからでしょうか、帰国して何となく行くようになった教会が、Kちゃんとの出会いの場となりました。
やがて二人は結ばれ一男一女に恵まれました。Aさんが牧師の資格を得て教会を任されると、彼女もまた銀行を退職、彼を支えるべく教会で懸命に働きました。とっても健康に見えましたし、信者さんの信頼は篤く、彼女の人生で最も輝く充実した年月であったことと思います。
花に埋もれ 旅立ちぬ
そんな最中の急変、突然の死・・・でした。悲しみを抑えた夫君Aさんの淡々とした司祭、息子と娘の涙でぼろぼろの挨拶・・・。繰返し歌われる讃美歌と引用される聖書の言葉は総てAさんが選びました。その意味と由来は私にはわからずとも、祭壇にいる彼女には総てわかったことでしょう。
Kちゃんの姉の寄稿は『妹は花に埋もれ 旅立ちぬ』・・・彼女にふさわしいタイトルでした。
【過去ログ目次一覧】
ごあいさつ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/7de1dfba556d627571b3a76d739e5d8c
腎がんのメモリー http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/bee90bf51656b2d38e95ee9c0a8dd9d2
旅行記 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/23d5db550b4853853d7e1a59dbea4b8e
閑話休題 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/c859a3480d132510c809d930cb326dfb
かんわきゅうだい http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a0b140d3616d89f2b5ea42346a7d80f0
吾輩も猫である1~40 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/58089c94db4126a1a491cd041749d5d4
吾輩も猫である41~80 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/dce7073c79b759aa9bc0707e4cf68e12
吾輩も猫である81~ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/f9672339825ecefa5d005066d046646f