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Channel: デ某の「ひょっこりポンポン山」
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「光の河」

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 「おぉ!蕾が・・・」と思った薔薇。一つ、二つと数えていたら、いつの間にか数えきれないほどぎっしり!咲きました。今年の春は駆け足で咲き 散り行く桜に驚かされましたが、瞬く間に咲いた薔薇も、惜しげもなく命を棄てるように 枯れていくのでしょうか。



 連休が終わり帰省に際し図書館で書棚を漁りました。「小説」の書棚でしたが、歌人である道浦母都子さんの「光の河」に眼が止まりました。タイトルから遠藤周作「深い河」を思いました。映画化もされた小説ですが、遠藤周作大先生のとんでもない・・・駄作!

 そんな印象から厭な予感がしたうえ、彼女の小説第一作「花降り」も失敗作?と思っていましたから、借りるのを少し躊躇しました。でもそこが書店と図書館のちがいですね。「取り敢えず購入」はありませんが、「取り敢えず借りておこう」は大アリ!です。

 とばし飛ばしに読み進めていたとき、偶々彼女のお父様(故人)の或る展覧会の話から「光の河」へ・・・。もともとは実際の出来事を綴ろうとされ小説とするおつもりではなかっただけに、登場人物それぞれが私小説という以上にリアル!な存在ではあります。


          昨年5月18日に撮った拙庭の薔薇・・・今年よりかなり遅い開花でした。

 「愛してもいいかしら」・・・冒頭の一行です。そう言う遥子は、分身というより作者そのものですから 少なからずドキッとします。その相手、妻子ある佐伯とは広島で出遭いました。進行した甲状腺がんと闘う佐伯は、「生きることが今の僕魔の仕事なんだ」と。

 歌人として活躍する遥子はTVのルポでチェルノブイリ原発を取材します。これで放射線から護れるの?という薄い防護服を渡され、廃炉となった原発の百メートル余の至近距離へ。やがてその影響ではないか?と思われる甲状腺機能の低下に遥子は悩まされます。

 『ショーツ1枚となりて着替えぬ防護服なる白装束に』
 『恐れつつ近付きゆけばチェルノブイリ第四発電所は棺桶のごとし』
 『わたくしをすでにし冒しているならん放射能とう幻の癌』

 広島、チェルノブイリ、そして東北大震災と福島の原発崩壊。放射能というまさに眼には見えない脅威で人生が繋がり行きます。小説の記述以上に、遥子が詠む短歌が登場人物の心象風景を的確に抉ります。広島で遥子に生け花を教える先生も被爆者でした。

 『そっとしておくそれしかなくて病むひとの呼気の乱れを波のごと聴く』
 『生きていれば意志は後から従きくると思いぬ冬の橋渡りつつ』

 『あなたは間もなく ”生を完成する ”。それは、悲しみではなくて、ひょっとして、よろこびなのかもしれない」。「死」とは「生を完成する」こと・・・そんな思いにかられ遥子が『そうだ。インドに行こう』と旅立つくだりはまさに遠藤周作「深い河」と重なります。

 『死を待つ家にひたすら死を待つ老いびとの動かざる眼は他界を見る眼』
 『いっさいのこころ無になればバナラシに人の匂いの濃き風が吹く』
                 ※ バラナシ・・・ガンジス河畔のヒンドゥー教の聖地

 ガンジス河で沐浴しつつ遥子は身体の中に何かが燃えてくるように思いました。
 『人生は旅。人生は誰でも渡る橋。私は自分の死にさえも愛を感じる』。繰り返しそう唱えながら遥子はガンジスの深みに進んで行きます、光の河のように輝くガンジスに・・・。


      きょうは終日雨が降りつづきましたが、紫陽花はまだまだ・・・のようです。

 マスカーニの歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ・・・インターメッツォ(間奏曲)」。甘美な調べだと思いこんでいたこの曲は寧ろ惨劇にこそふさわしく、映画「ゴッドファーザーⅢ」の終幕にも流れました。
 歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナは、19世紀イタリアの不倫と決闘の凄絶な物語。敢えてストーリーを詳述しなかった「光の河」は、道浦母都子さんらしくストイックでプラトニックな展開でした。




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