学生時代の友人から或る研究会に誘われ、昨7日午後、激しい雨をついて京都に出かけました。怪しい研究会ではありません。勿論!妖しい研究会でもありません。テーマは「英国のEU離脱について」「核禁条約会議に参加して」。参加者は男女各4の8名、うち先輩4名、後輩3名でした。二つのテーマで3時間余・・・新聞やTVの報道からは得られない多彩かつリアルな報告に触れ眼からウロコ・・・。あっ!ここでスルー!OKです(笑)
今年1月、かつて英国に在住&仕事されポンドで年金を貰う学生時代の先輩(女性)が「英国のEU離脱は大正解」「良かったといずれ証明される」と明快に仰いました。この問題でこんなにも確信的な意見には初めて触れました。その先輩が「EU離脱問題で研究会」をされると聞き、早速!手をあげたのでした。また7月に国連本部で開かれた核兵器禁止条約に向けた会議に出席された方の報告もあると聞き、二重に興味津々でした。
核禁会議ホワイト議長(左)と被爆者代表
被爆者の声がこの核禁条約の原動力に
七夕の今年7月7日、核兵器禁止条約は採択されました。国連加盟国の63%(122か国)がこれに賛成しましたが、米英仏露中など核保有国とともに日本政府は不参加を表明しました。この会議の議長はコスタリカの女性がつとめ、日本から駆けつけた被爆者から日本における核兵器禁止を求める296万余の署名が提出されました。議長は署名を胸に押し当て涙ぐみ「被爆者の声がこの条約の原動力になった」と語られたそうです。
核禁条約の知られざる意義
この条約の最大の特色は「核兵器を初めて違法化した」ことにあります。条約は50か国が批准した後、90日を経て発効しますが、会議に不参加の国も条約に反対した国も、核兵器の開発・実験・保有・使用は国際的に総て違法となります。条約前文に「核兵器の廃棄が核兵器を二度と使わない唯一の保証」とあり、北朝鮮の危険な動きに日本はじめ世界の危惧が高まる中、この条約の意義が余りに知られていないことを残念思います。
会議不参加の国の机上には折鶴が置かれたそうです
EU離脱問題よりも・・・
英国のEU離脱問題を報告されたのは70代の女性です。ポンドでの年金があることと一人身の身軽さから、英国の小さな島々にしばしば「シニア留学」される由。語学力の維持、学ぶ刺戟のほか、長期の(数週間)ホームステイで文字通りアットホームの体験が出来ることと、旅費がツァー等に較べて格安な点も魅力だそうです。そういう話から入られたので、「EU離脱問題よりもそっちの話のほうが面白い」との声がありました(笑)
欧州合衆国構想~EU創設
まず歴史的な経緯について。戦後すぐ、チャーチルが「欧州合衆国」構想を示し、これが以後の欧州統合問題の出発点となります。1957年にEEC(欧州経済共同体)が誕生し、67年にはEC(欧州共同体)に移行しますが、英国は加盟していませんでした。加盟に際してはド・ゴール払大統領に阻まれ、73年に漸く加盟が承認されました。93年にEU(欧州共同体)に移行、そして昨年6月の国民投票でEU離脱が決まりました。
国民投票の主な動向
国民投票には3350万人が投票し(投票率72%)、その動向について分析を試みました。①「EU残留」支持は年齢が若いほど多く18~24才の残留支持は73%、一方65才以上の残留支持は40%。②管理職・専門職など上流階級の残留支持57%、ブルーカラー層の残留支持は36%にとどまりました。③支持政党別では、保守党が残留42%、労働党は同63%。その他、自由(民主)党は残留70%、独立党は同4%。
動向分析
残留を唱え破れた保守党のキャメロン首相は辞任、同じ保守党で当初は残留を唱え後に離脱を表明したメイが首相に就任しました。①についてはグローバルに活躍したい若い世代は残留に、EUに施策の主導権を握られたくない旧い世代は離脱に傾いたとの見方が一般的な中、「若者の希望を打ち砕く英国に未来はない」は卓見でした。②の傾向は米国大統領選のトランプ支持層や日本の維新勢力の傾向に似ているとの分析もありました。
分析が難しい・・・
③において残留支持が圧倒的に多かった労働党は野党ですが、労働党を支持するブルーカラー層の残留支持が圧倒的に少なかったのは・・・分析しきれませんでした(笑)。この問題では、保守党・労働党ともに党内で意見が割れており、支持政党による傾向分析になじまない問題と思われます。そもそも代議(議会)制民主主義の典型たる英国で直接民主主義の手法である国民投票で国の進路を定めようとしていること自体が不思議な現象でした。
研究会のために用意された手作り資料
EU離脱は歓び・・・
結果は52:48の僅差でEU離脱!に決しました。どこかの「都構想」のように、もう一度!投票に付するバカはしますまい。紆余曲折を経ながらもEU離脱が着々と進むでしょう。いずれにしても高年齢層・ブルーカラー層はじめEU離脱派は歓んでいます。ドイツ主導の欧州議会にとやかく邪魔されず自らの施策を自ら意思決定できる、移民流入に歯止めをかけられる、そもそも英国は大国であり連合に依存せずとも大丈夫と・・・。
EU残留派は嘆く
一方、若者や中上流階級などEU残留派はガックシ! EU圏を基本に構築されている金融・経済・雇用への悪影響を心配し、若者は島国英国に閉じ込められるような閉塞感を覚えるでしょう。もともと通貨はポンドにこだわりユーロを使わず、圏内の移動にパスポート不要のシェンゲン協定に加わらなかった英国とはいえ、EUを離れ単一市場に戻る懸念や残留支持が圧倒したスコットランドの独立機運にも影響を及ぼしそうです。
二次会あり!
およそ3時間半・・・それなりに白熱した意見交換を終え近くのレストランの二次会へ移動しました。ただし二次会ではEUも核禁条約もまったく話題に上りませんでした。みんな旧知の間柄ですから、専ら近況であるとか学生時代の「えっ!知らなかったなぁ・・・」って話とか、「〇〇が最近おかしい(妖しい?)らしい。誰か教育的指導をすべし」といったトンデモナイ話とか・・・。自然発生的?な研究会の筈ですが、次回は12月某日の由。
如何にも英国風の行進曲 エルガー「威風堂々」・・・関フィルの藤岡幸夫さんが東フィルを指揮
Where is "Rarudo-sann" now ? Where is "Guranora-sann" now ?
【過去ログ目次一覧】
新聞・TV・映画etc. http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a7126ea61f3deb897e01ced6b3955ace
吾輩も猫である~40 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/58089c94db4126a1a491cd041749d5d4
吾輩も猫である~80 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/dce7073c79b759aa9bc0707e4cf68e12
吾輩も猫である81~140 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/f9672339825ecefa5d005066d046646f
吾輩も猫である141~ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/b7b2d192a4131e73906057aa293895ef
かんわきゅうだい(57~) http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/20297d22fcd28bacdddc1cf81778d34b
かんわきゅうだい(~56) http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a0b140d3616d89f2b5ea42346a7d80f0
閑話休題 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/c859a3480d132510c809d930cb326dfb
腎がんのメモリー http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/bee90bf51656b2d38e95ee9c0a8dd9d2
旅行記 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/23d5db550b4853853d7e1a59dbea4b8e
ごあいさつ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/7de1dfba556d627571b3a76d739e5d8c
今年1月、かつて英国に在住&仕事されポンドで年金を貰う学生時代の先輩(女性)が「英国のEU離脱は大正解」「良かったといずれ証明される」と明快に仰いました。この問題でこんなにも確信的な意見には初めて触れました。その先輩が「EU離脱問題で研究会」をされると聞き、早速!手をあげたのでした。また7月に国連本部で開かれた核兵器禁止条約に向けた会議に出席された方の報告もあると聞き、二重に興味津々でした。
核禁会議ホワイト議長(左)と被爆者代表
被爆者の声がこの核禁条約の原動力に
七夕の今年7月7日、核兵器禁止条約は採択されました。国連加盟国の63%(122か国)がこれに賛成しましたが、米英仏露中など核保有国とともに日本政府は不参加を表明しました。この会議の議長はコスタリカの女性がつとめ、日本から駆けつけた被爆者から日本における核兵器禁止を求める296万余の署名が提出されました。議長は署名を胸に押し当て涙ぐみ「被爆者の声がこの条約の原動力になった」と語られたそうです。
核禁条約の知られざる意義
この条約の最大の特色は「核兵器を初めて違法化した」ことにあります。条約は50か国が批准した後、90日を経て発効しますが、会議に不参加の国も条約に反対した国も、核兵器の開発・実験・保有・使用は国際的に総て違法となります。条約前文に「核兵器の廃棄が核兵器を二度と使わない唯一の保証」とあり、北朝鮮の危険な動きに日本はじめ世界の危惧が高まる中、この条約の意義が余りに知られていないことを残念思います。
会議不参加の国の机上には折鶴が置かれたそうです
EU離脱問題よりも・・・
英国のEU離脱問題を報告されたのは70代の女性です。ポンドでの年金があることと一人身の身軽さから、英国の小さな島々にしばしば「シニア留学」される由。語学力の維持、学ぶ刺戟のほか、長期の(数週間)ホームステイで文字通りアットホームの体験が出来ることと、旅費がツァー等に較べて格安な点も魅力だそうです。そういう話から入られたので、「EU離脱問題よりもそっちの話のほうが面白い」との声がありました(笑)
欧州合衆国構想~EU創設
まず歴史的な経緯について。戦後すぐ、チャーチルが「欧州合衆国」構想を示し、これが以後の欧州統合問題の出発点となります。1957年にEEC(欧州経済共同体)が誕生し、67年にはEC(欧州共同体)に移行しますが、英国は加盟していませんでした。加盟に際してはド・ゴール払大統領に阻まれ、73年に漸く加盟が承認されました。93年にEU(欧州共同体)に移行、そして昨年6月の国民投票でEU離脱が決まりました。
国民投票の主な動向
国民投票には3350万人が投票し(投票率72%)、その動向について分析を試みました。①「EU残留」支持は年齢が若いほど多く18~24才の残留支持は73%、一方65才以上の残留支持は40%。②管理職・専門職など上流階級の残留支持57%、ブルーカラー層の残留支持は36%にとどまりました。③支持政党別では、保守党が残留42%、労働党は同63%。その他、自由(民主)党は残留70%、独立党は同4%。
動向分析
残留を唱え破れた保守党のキャメロン首相は辞任、同じ保守党で当初は残留を唱え後に離脱を表明したメイが首相に就任しました。①についてはグローバルに活躍したい若い世代は残留に、EUに施策の主導権を握られたくない旧い世代は離脱に傾いたとの見方が一般的な中、「若者の希望を打ち砕く英国に未来はない」は卓見でした。②の傾向は米国大統領選のトランプ支持層や日本の維新勢力の傾向に似ているとの分析もありました。
分析が難しい・・・
③において残留支持が圧倒的に多かった労働党は野党ですが、労働党を支持するブルーカラー層の残留支持が圧倒的に少なかったのは・・・分析しきれませんでした(笑)。この問題では、保守党・労働党ともに党内で意見が割れており、支持政党による傾向分析になじまない問題と思われます。そもそも代議(議会)制民主主義の典型たる英国で直接民主主義の手法である国民投票で国の進路を定めようとしていること自体が不思議な現象でした。
研究会のために用意された手作り資料
EU離脱は歓び・・・
結果は52:48の僅差でEU離脱!に決しました。どこかの「都構想」のように、もう一度!投票に付するバカはしますまい。紆余曲折を経ながらもEU離脱が着々と進むでしょう。いずれにしても高年齢層・ブルーカラー層はじめEU離脱派は歓んでいます。ドイツ主導の欧州議会にとやかく邪魔されず自らの施策を自ら意思決定できる、移民流入に歯止めをかけられる、そもそも英国は大国であり連合に依存せずとも大丈夫と・・・。
EU残留派は嘆く
一方、若者や中上流階級などEU残留派はガックシ! EU圏を基本に構築されている金融・経済・雇用への悪影響を心配し、若者は島国英国に閉じ込められるような閉塞感を覚えるでしょう。もともと通貨はポンドにこだわりユーロを使わず、圏内の移動にパスポート不要のシェンゲン協定に加わらなかった英国とはいえ、EUを離れ単一市場に戻る懸念や残留支持が圧倒したスコットランドの独立機運にも影響を及ぼしそうです。
二次会あり!
およそ3時間半・・・それなりに白熱した意見交換を終え近くのレストランの二次会へ移動しました。ただし二次会ではEUも核禁条約もまったく話題に上りませんでした。みんな旧知の間柄ですから、専ら近況であるとか学生時代の「えっ!知らなかったなぁ・・・」って話とか、「〇〇が最近おかしい(妖しい?)らしい。誰か教育的指導をすべし」といったトンデモナイ話とか・・・。自然発生的?な研究会の筈ですが、次回は12月某日の由。
如何にも英国風の行進曲 エルガー「威風堂々」・・・関フィルの藤岡幸夫さんが東フィルを指揮
Where is "Rarudo-sann" now ? Where is "Guranora-sann" now ?
【過去ログ目次一覧】
新聞・TV・映画etc. http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a7126ea61f3deb897e01ced6b3955ace
吾輩も猫である~40 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/58089c94db4126a1a491cd041749d5d4
吾輩も猫である~80 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/dce7073c79b759aa9bc0707e4cf68e12
吾輩も猫である81~140 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/f9672339825ecefa5d005066d046646f
吾輩も猫である141~ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/b7b2d192a4131e73906057aa293895ef
かんわきゅうだい(57~) http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/20297d22fcd28bacdddc1cf81778d34b
かんわきゅうだい(~56) http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a0b140d3616d89f2b5ea42346a7d80f0
閑話休題 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/c859a3480d132510c809d930cb326dfb
腎がんのメモリー http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/bee90bf51656b2d38e95ee9c0a8dd9d2
旅行記 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/23d5db550b4853853d7e1a59dbea4b8e
ごあいさつ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/7de1dfba556d627571b3a76d739e5d8c