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Channel: デ某の「ひょっこりポンポン山」
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この世界の片隅に(かんわきゅうだい56)

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 以前、ある方のブログでこの映画を知りました。あらためてあの戦争を問う映画、ポスターの絵からすでに魅かれたアニメ、そして京都の繁華街にある 廃校になった小学校の校舎を利用した映画館「立誠シネマ」。いずれ・・・と思っていて、今日!行きました。

 映画の舞台は、軍港で知られた呉。私の父は、戦争中に呉の高射砲部隊に配属されたことがあり、後に「敵は高射砲の性能を知りつくし弾はB29にまったく届かんかった」と語っていました。映画で、B29に高射砲が向けられるシーンに一瞬!胸が詰まりました。

   

 阪急河原町駅を降り、高瀬川に沿って木屋町を北へ徒歩数分。学校らしい建物が見えたら、それが「立誠シネマ」です。明治30年のちょうど今の時期、この小学校が建つ前のこの地(京都電燈株式会社の中庭)で日本で初めて映画の試写実験が行われました。

   

 立誠小学校は昭和3年に建てられ、67年後の平成5年に廃校になりました。その玄関が、そのまま立誠シネマの玄関になっています。それと知らなければ小学校だと思い通り過ぎてしまうでしょう。玄関に入ると小学校らしい懐かしい匂いがまだ漂います。

 戦中から敗戦直後までの数年間、広島から呉に嫁いだ娘(すずさん)の、当時としてはごく普通の日々、やがて軍港の街とあって連日!焼夷弾に襲われる日々、右手を失くしたすずさんは玉音放送に「まだ左手も足もある。みんな玉砕する筈じゃなかったのか」。
 
   

 玄関から廊下に沿ってかつての校長室、職員室、保健室らしき部屋が並びます。写真からは薄暗くて辛気臭く思われるでしょうが、寧ろ落ち着いた雰囲気に安らぎさえ覚えます。そして奥の階段の踊り場には南側からの陽光がさんさんと降り注いでいます。

 戦時下の小学校では授業らしい授業は行われません。「休んでも、どうせたいした授業はないじゃろ」と・・・。すずさんの年齢にあわせているためか学校の様子は詳細には描かれませんが、あの時代、親をなくした子はいったいどんな日々を送ったのでしょう・・・。

   

 階段の踊り場は、写真では逆光のためシルエットぽく見えますが、ほっこり明るい陽だまりです。2階は衣料品のお店か縫製場?などに使われていて「関係者外ご遠慮を」と。シネマは3階まで上がります。幅広い階段を上るのが、なんか胸躍り心愉しくて・・・。

   

 壁に貼られたポスターは「近日公開」の映画・・・。上写真の右側のポスターをご覧ください。「David Bowie is」と書かれたデヴィッド・ボウイ追悼1周年、生誕70周年の回顧ドキュメントです。ちなみに「デブと某医」はデヴィッド・ボウイにちなみます(笑)

   

 3階に来ると漸くシネマのフロアーです。ひと気ないように見えるのは、人のいない時を見はからって撮ったためで、上映時間が近づき続々人が集まってきます。客席数はたぶん50~60のミニシアター、平日の午后なのに一瞬!「札止め」を心配しました。

   

 ドアを開けて係の方が「間もなく上映します。お急ぎくださ~い」。このドアから入るとそこがロビーで、映画関連の書籍等が展示されていました。撮りたかったのですが、たくさん人がいて撮るのは差し控えました。若い方が多いのが殊の外!嬉しかったです。

 冒頭から、シーンの一つ一つになんとも仕合わせな気分に誘われます。のどかで平和で普通の人々の普通の暮し・・・。天真爛漫でのほほんとしたすずさんは18歳、えっ?と思うほどあっけなく・・・言われるままに結婚し、嫁ぎ先でもその性格のままに溶け込みます。

 やがて戦火は烈しさを増し、絵が得意で、絵でみんなを和ませていたすずさんの右手が爆弾で失われます。そして8月6日、実家の広島に原爆が落とされ、茫然と遠くのキノコ雲を眺めます。原爆の惨禍は・・・アニメであっても極まりなく酷く、こころ塞ぎます。

 敗戦、食糧難、進駐軍・・・。空襲後は涙が止まらないシーンが続きますが、戦争孤児と思われる子をすずさんがひきとり再び戦争前の普通の家族の、普通の穏やかで笑いのある日々が甦ります。なお、男女の心の襞に触れる秀逸な挿話は、映画をご覧ください。

 映画冒頭に流れる「悲しくてやりきれない」。サトウハチローさんの詩に加藤和彦さんが作曲しました。サトウさんには「もずが枯れ木で」という秀逸な反戦歌がありますが、怒りの矛先が見つからない絶望を歌う「悲しくてやりきれない」ではあります。



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