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Channel: デ某の「ひょっこりポンポン山」
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かんわきゅうだい 29 ( パリで句会・・・前篇 )

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 「地球俳句」と「土曜俳句」
 俳句に興味がなかった私に、パリの女子高生と句会・吟行する「地球俳句」(2003年にBSで放送)が少し目を開かせました。そして或るブロ友の「土曜俳句」を懸命に読み取ろうとしたこの一年余、更に俳句が身近になったところに前記BSの番組が再放送されました。その間の年月を思いつつ改めて興味深く視聴しました。

 俳句のきまりごと
 案内役は、小説家で「俳句という遊び」(岩波新書)の書もある小林恭二さんと女優の井川遥さん。二人はパリを散策し、小林さんが井川さんに俳句の手ほどきをします。
 【1】匂い、音、目にした光景・・・それらを言葉とし、言葉を「動詞」でつなぐ。
 【2】自由律俳句というものもあるが、基本は五七五の十七文字におさめる。
 【3】季語を入れる。季節感の文学とも言われ旧暦により定められている約束事です。

 

 群鳥が秋の霞をかけていく (遥)
 井川さんの最初の一句は『群をなす鳥が霞をかけてゆく』。小林さん「鳥が空を駆けるのはあたりまえ」と。しかし井川さん「駆けて(飛んで)行くではなく、群れをなした鳥がカーテンのように霞みをかける光景」だと。小林さん、ほぉ~っ!と・・・その深さに感嘆しました。最初の句を更に練り上げ『群鳥が秋の霞をかけていく』。

 色づいて踊り疲れて眠りかな (遥)
 場所はリュクサンブール公園・・・バリの人々が憩うところです。落ち葉が地に敷きつめられています。ですから「色づいて」は枯葉、すなわち秋の季語。深紅の枯葉が風にあわせて舞い落ちる光景が、井川さんにはダンスを踊っているように映ったのでしょう。踊り疲れた枯葉が地に眠る光景に、自身の心地よい疲れも重ねり・・・。

 

 たんぽぽを握りつぶしたその手かな (恭二)
 俳句を作れば単位を貰えるということで入ったゼミの最初の句会で、小林さんが詠んだ一句です。一点も投票されなかったこの句に、教室を出て行く先生が一言「これもなかなかいい句だね」と仰った由。その一言がなかったら今日の小林さんはなく、この「パリで女子高生と句会」の企画、放送もなかったかもしれない運命の言葉かな。

 俳句・・・一瞬にして緊張を解き放つ言葉
 フランス語で俳句、しかも「季語」という概念を入れて・・・。そこで小林さんは、フランスの俳人であるA.ケルベンさんを訪ねます。ケルベンさんは「フランス語は季節と結びつきのつよい言語ですから大丈夫です」「句会では批評を通じてお互いを大事に思うことでしょう」、そして俳句の魅力は「一瞬にして緊張を解き放つ言葉」と。
 ※「咳をしてもひとり(尾崎放哉)」は、ケルベンさんの好きな自由律俳句。
  尾崎は、鳥取県出身の型破りの俳人です。ちょっとお国自慢させていただきました(笑)
 
 

 フランス語17音節、季語などを定めて・・・
 さて、パリの女子高生による大句会の始まりです。まず五七五の十七文字については、日本の名句をフランス語に訳すと13音節になったことから、少し余裕をみて17音節を基本形としました。そして季語については幾つかの言葉を出し合い、秋の季語として「風」「きのこ」「雨」「銀杏」など・・・をフランス版の臨時歳時記としました。

 

 一人の男が孤独にたたずむ
 小林さんの俳句入門の後、実際に句作をして貰い小林さんがひとり一人批評、添削指導し疑問にこたえます。写真(上)の女生徒は尾崎放哉ばりの自由律俳句。ただ一人でいるのではなく、群衆の中に「一人孤独に」いるのだと・・・。小林さんが「もう少し情景を」には、「先生は少し謎があるほうがいいと仰った」と。小林さん「私の負けです」。

 

 パリの女子高生は みんなオトナです
 教室の句会では一人2点ずつ票を入れます。得票第一位は上左『二人きりで愛し溺れる彩の海』。う~むぅ~・・・思わず唸っちゃいました。井川さんの句には票が入りませんでしたが、井川さん「女子高生にあわせようと可愛い句にしたのが敗因」との分析は正解。それにしてもこの句、日本のどんなマセた女子高生でもよう作らないでしょう。

 絶賛! 感嘆! 深くて重厚な心象風景
 小林さんが絶賛した句が上右『鳥の背に涙飛び去る風の中』。どんな哀しみだったのか、泣きぬれたその涙を背にのせて鳥は遥か遠くの世界へ飛び去る・・・。彼女自身が鳥なのか、鳥に彼女の哀しみを託したのか・・・。「私の知る限りこんな句は日本にはありません」と感嘆する小林さん。パリの女子高生の深くて重厚な心象風景ではありました。

 

 一挙に全篇と思って書き始めましたが、息がつづきません。「吟行」篇はまた後日UPします。
  それにしても最初にこの放送を視てからもう13年がたったんですねぇ。
  前半の息抜きがわりに、番組中に井川遥さんが口づさむ「あの青い空のように」をお聴き下さい。
 

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