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Channel: デ某の「ひょっこりポンポン山」
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ひとりで しんだ じぶんで しんだ

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                 お雛さま … 孫娘もいることですし 久しぶりにQPのPC画をUPします。

 NHKは嫌いです。理由は ➀ 一方的に電波を流し強制的に受信料を納めさせる ➁「皆様のNHK」と言いつつニュースなど政権側に偏る番組が多いこと。受信料は払いたくないのですが、妻が世間体を気にするので払っています。そもそも水道料(2か月約3000円)より高い受信料(同4340円)が腹立たしい。

 でも NHKのBSやE-テレで制作 放送される特集、ルポなどは 民放各局とは段違い平行棒です。制作にかける時間、労(財)力が桁違いで、作品の質の高さが際立ちます。ちなみにNHKがWOWWOWのような受信システムになれば、地上波の "NHK総合" は即!解約します。E-テレとNHK-BSは引続き契約します。

 そのNHK-Eテレで2/12に放送された「ぼくはしんだ じぶんでしんた "谷川俊太郎と死の絵本"」は、NHKならではの力作でした。今年1月に発売された 絵本「ぼく」作 : 谷川俊太郎 絵 : 合田里美 … 京都に住む一人のフリー編集者が「少年の自死」をテーマに絵本を企画、出版するまでの2年に及ぶルポです。

    
        刷り上がり … 一冊の書が印刷 製本される工程を初めて見ました(NHK E-テレより… 以下同)

 筒井大介さん(43歳) は「死をめぐる絵本」のシリーズを手がけているフリーの編集者です。「少年の自死」は避けて通れないテーマだと思っていました。どんな作品にするか考えているうちダメモト!で谷川俊太郎さんに「詩」をオファーします。しかし 谷川さんからの返事は「むずかしい」でした。

 ところが一か月後、谷川さんからファクスでテキスト(詩)「ぼく」がとどきました。筒井さんはビックリしつつ歓喜します。早速!「ぼく」をくり返し読み、この詩とテーマにふさわしい "絵本画家さがし" をはじめた或る日、ふと目にとまったのが イラストレーター合田里美さん(37歳)の "挿絵" でした。

 『 ぼくは しんだ じぶんで しんだ … ぼくは しんだ ひとりでしんだ …
   おにぎり おいしかった むぎちゃ つめたかった … あおぞら きれいだった ともだち すきだった …
   うちゅうは おおきすぎる じかんは おわらない … ぼくは しんだ じぶんで しんだ … 』
                     ... 谷川俊太郎「ぼく」より

 絵本は初めての合田さん。谷川俊太郎さんは余りに大きな存在で実感がなかったそうですが、谷川さんの詩からイメージし "ラフ" を描き上げました。"ラフ" は筒井さんから谷川さんに送られました。谷川さんは『いい線いってる』と仰った由。"無口な感じ" の絵が谷川さんの感性に溶けたようです。

      

 筒井さんと合田さんが谷川さんの自宅を訪ねた最初の打ち合わせでは ... "こどもの自死" という重いテーマをどう受けとめればいいのか...。なぜ どういうぐあいに 死にむかっていったのか...。谷川さんは『人を描くとか考えず 世界の美しさを 残酷さを 描く。死を描くけど すごく明るい絵本にしたい』と。

 コロナ禍で 膝を交えた打ち合わせは最初の一回きり。あとはメール・電話・ファクスで進みました。第一稿では合田さんの絵について谷川さんが「説明的すぎる」。合田さんも『これまで読物の挿絵を描いてきたので、挿絵の域を出ていなかった』と気づくなど ... 互いの感性が響きあって進みました。

 谷川さんの詩に『おとうさん えらくなっても おかあさん きらいにならないで』のくだりがあります。編集者とは最初の読者 ... 筒井さんはこのパターン化された場面が気になり『この一節は なくてもいいのではないでしょうか』とおそるおそる言うと、谷川さんはあっさり!諒解。凄い!シーンでした。

 第二稿、第三稿と進み谷川さんも『これはいけそうな気がする』と。いけそうになるほどに谷川さんの合田さんの絵に対する注文が増えます。アイデアを含めて大量の提案がとどきます。筒井さんは編集者として『一生!終わらなかったらどうしよう』と焦りますが、合田さんは瑞々しく受けとめます。

    

 絵の中の少年が手にしているのは "スノードーム" 。谷川さんの提案でテーマに近接して描くことになりました。しかし合田さんがテーマとして強く描くと 今度は谷川さんが『テーマと思わせすぎない。もっと "無口" に』と。そうしたくり返しを筒井さんは「終わらない」と心配したのではありました。

 谷川さん『自然の中にある命としての孤独… それは人間社会の 人間関係の中での孤独とはちがう』『この詩の "ぼく" が死んだ理由は人間関係だけにあったのではないと読者に感じてほしい』。谷川さんが詩人として鮮烈にデビューした10代終わりの詩集「二十億光年の孤独」が70年を経て重なります。

    
            「ぼくは思わずくしゃみをした」に初めて触れたときは … 衝撃!でした。

 構想から完成まで丸二年。その過程をNHKのカメラが追いました。1時間の番組にいったいどれだけのスタッフが投じられたかは兎も角、この絵本の中身と併せて絵本制作の過程をつぶさに垣間見ました。詩人と画家の思考と感性に編集者もまた凄まじい執念で交錯します。素晴らしい1時間でした。

 出来上がった絵本をもって筒井さんと合田さんが谷川さんを訪ねました。谷川さんは時間をかけて舐めるように三回、絵本をめくりました。筒井さんが「お蔭さまでようやく完成しました」と言うと、谷川さんの第一声は『まだこれからこの絵本が売れるかどうかだね』。ただの詩人ではありません。

 最後に 谷川さんの言葉…『意味偏重の世の中です。誰もが何にでも意味を見つけたがる。意味より大事なのは "何かが存在する" ということ。それを言葉を介さないで感じとることが大切だと思う』『人が死んでも別に地球は在る。そうしてずっと人も地球も続いているのが、ちょっと怖い感じがする』。
   ※ こんなしがないブログでも それなりに "著作権" が気になり十分ご紹介できなかったと…言い訳しておきます。

    
              筒井さん、合田さんから届けられた絵本「ぼく」を読み耽る谷川さん。

       "蛍の光" … 旧交を温めあうスコットランドの原歌 "Auld Lang Syne" をロッド・スチュアートで!
    
        


 


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吾輩も猫である~40 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/58089c94db4126a1a491cd041749d5d4
吾輩も猫である~80 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/dce7073c79b759aa9bc0707e4cf68e12
吾輩も猫である81~140 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/f9672339825ecefa5d005066d046646f
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人生の棚卸し http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/ddab58eb8da23a114e2001749326f1f1
人生の棚卸し(2) https://blog.goo.ne.jp/00003193/e/22b3ffae8d0b390afee667c0e9ed92ed
かんわきゅうだい(57~) http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/20297d22fcd28bacdddc1cf81778d34b
かんわきゅうだい(~56) http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a0b140d3616d89f2b5ea42346a7d80f0
閑話休題 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/c859a3480d132510c809d930cb326dfb
腎がんのメモリー http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/bee90bf51656b2d38e95ee9c0a8dd9d2
旅行記 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/23d5db550b4853853d7e1a59dbea4b8e
新聞・TV・映画etc. http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a7126ea61f3deb897e01ced6b3955ace
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名残の季節 https://blog.goo.ne.jp/00003193/e/ce82e1c580f64c8ab8d43e2c674a481d





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