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Channel: デ某の「ひょっこりポンポン山」
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カタイ男だとお思いでしょうが…

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 硬い、堅い、固い … どちらかと言えば あまり良いイメージはありません。これに「お」 がつき 「おカタイ」 となると 揶揄、冷やかし!の類となり明らかに良いイメージではありません。ですからブログで 「おカタイ」 ことを書くと即!反応がなくなります

 でも病気・医学に関わること、政治・経済・社会に関わることとなれば、和らかで温かく明るいブログは稀で(具体のテーマにもよりますが)総じて難しくなります。予めそうお断りして「おカタイ」ブログを書くこととします。はい! ここで逃げないでくださ~い。


                     天の援け!美しいQPの絵を…(以下同)

 お固い "がん" のお話です。がんは分子レベルの変異で始まり、見えるほどの“塊”になるまでかなりの年月を要します。見える頃、塊になる頃には自覚症状が現れ、それなりに進行しています。そして がんと診断される前と後は、多かれ少なかれ人生観が変わります。

 …と記しますと、卒がん!した筈なのに まだ "がん" を引きずっているの? と? 勿論!術後3~5年の頃とは異なりますが、書店で新聞でTVで "がん" という言葉に触れると、いまだにピッ!と反応します。ほんとうに卒がんするには まだまだ時間がかかりそうです。


                ガウラ白蝶草。花言葉が "負けず嫌い" とはなんとも…

 抗がん剤。その名の通りがん細胞を死滅させる薬剤です。但し 正常な細胞を傷つけたり死滅させることも多く、時に "耐え難い" 副作用を伴います。そこに現れたのが "分子標的薬" でした。高い精度でがん細胞に標的を絞りますから、それだけ副作用は少なくなります。

 私が腎がんと診断されたのは10年前… 分子標的薬が現れ始めた時期とほぼ重なります。現在、様々なタイプの分子標的薬が承認されつつありますが、従来の抗がん剤より副作用が軽減されたとはいえ標的は完全には絞りきれず、患者はなお副作用に苦しんでいます。

 流れを大きく変えたのがオプジーボ "免疫チェックポイント阻害薬" です。言わば "逆転の発想" です。がん細胞を直に攻撃するのではなく、がん細胞の援軍を無力化させる! … がん細胞が(免疫から)自分を護るために働かせている "抗体" にブレーキをかける薬です。

 オプジーボの薬価は 当初 一人年4千万円でしたが、現在は1千万円。殆ど公費(健保財政)で賄われます。高価!で画期的な新薬ながら 効果!は三人に一人。完治される方もいれば まるで効かない方もいます。それが "がん" の特徴であり複雑かつ難しさでもあります。


          QP… 学生時代のサークルの後輩。PC画を使わせていただいています。

 2018年度のノーベル医学生理学賞は、がん治療に全く新しい原理 "免疫チェックポイント阻害" の道を拓いた本庶佑氏とJ.アリソン氏が受賞しました。手術(がんの切除)、放射線、化学(抗がん剤)の三大がん療法にあって 抗がん剤療法の考え方を根本から変えました。

 人には "免疫" が備わり、侵入するウィルスや体内で起きる細胞の変異・増殖を防御します。併せて免疫が過剰に働き正常細胞まで傷つけることがないよう「ブレーキをかける」抗体でバランスを保っています。
 一方、がん細胞は自身を攻撃する免疫に この「ブレーキをかける」抗体を援軍として取り込みます。その一つが "PD1" 抗体であり、その仕組みを解明したのが本庶佑氏とJ.アリソン氏でした。
 実は この "PD1" 抗体を発見したのは 本庶研究室の石田靖雅氏(当時24歳)です。"Programmed Death(予定された死)"の意を込め "PD" と命名、第二 第三の "PD" も発見されると考え "PD1" としました。
 その後、石田氏は米国で研究することになり "PD1" は本庶研究室の後輩に託され、結果として本庶氏の受賞に結びつきました。発見!と解明! びみょ~ながら、石田氏は尊敬する本庶氏の受賞を心から歓んでいます。


           早く本格的な秋が来てほしいなぁ…そんな思いをこめコスモスを!           

 本庶さんはノーベル賞受賞記念講演で がん療法を一変させた "発想" について…
 『がん免疫療法は以前から提唱されましたが、成功しませんでした。その理由は免役システムのアクセルをふかそうとしたことにあります』 『私は免疫を抑制する因子をブロックする(ブレーキをかける)ことで免疫システムを再活性化させる着想を得ました』。

 分子レベルの研究 とりわけ がん研究の難しさについては…
 『人のDNAを構成する塩基は約60億対。その中の2万の遺伝子から様々なタンパク質ができる。そして人には60兆個(諸説あり)の細胞があり各々異なる遺伝子発現をする。これら総てを組み合わせると ”無限” と言ってもよいほどの多様性が生れる』。

 若い研究者の育て方については…
 『 人の能力差はものすごく大きい。各々の能力を見分けなきゃならない。難しいテーマを出すと潰れる人もいるから、能力に応じて与えるテーマも変えなくちゃならない』 『頭の良さと能力は必ずしも一致しない。なんでだろうね。僕はいまだにわからない』。

 そして “老い” について… やがて訪れる ”死” について…
 『一人一人の遺伝子は違うんだから、どうなる(どう死ぬ)か予想できない。幸せに死ぬ。天寿を全うする。難しいけどそれが理想。でも人はいずれ老いなきゃならない。みんないつか死ぬんだから死ぬのは不安じゃない。永遠に生きてたら大変なことになっちゃう』。 

 ※ ノーベル医学生理学賞と本庶佑氏 … 広瀬一隆著「京都大とノーベル賞」(河出新書)を参照しました。



 ご自身・ご家族を問わず "がん" を身近に経験された方はよくご存じのことを改めて記しました。がんが身近にないことは本当に幸いですから、知らないことは大いに歓びましょう。でも 国民二人に一人が "がん" の時代 … って "一家族一人以上のがん" ではあります。

 新型コロナも 「身近に迫っている」 と じわり!感じて初めて 警戒心が高まるように思います。今にして漸く "始まりの始まり" かな。なかなかね… 火がつかないとね(笑) その小さな "火" にさえならないこのブログ記ですが、お読みくださりありがとうございました。


    ※ 削除されていましたら… https://www.youtube.com/watch?v=scMjrL8vgDQ

  

【過去ログ目次一覧】
吾輩も猫である~40 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/58089c94db4126a1a491cd041749d5d4
吾輩も猫である~80 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/dce7073c79b759aa9bc0707e4cf68e12
吾輩も猫である81~140 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/f9672339825ecefa5d005066d046646f
吾輩も猫である141~ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/b7b2d192a4131e73906057aa293895ef
人生の棚卸し http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/ddab58eb8da23a114e2001749326f1f1
人生の棚卸し(2) https://blog.goo.ne.jp/00003193/e/22b3ffae8d0b390afee667c0e9ed92ed
かんわきゅうだい(57~) http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/20297d22fcd28bacdddc1cf81778d34b
かんわきゅうだい(~56) http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a0b140d3616d89f2b5ea42346a7d80f0
閑話休題 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/c859a3480d132510c809d930cb326dfb
腎がんのメモリー http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/bee90bf51656b2d38e95ee9c0a8dd9d2
旅行記 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/23d5db550b4853853d7e1a59dbea4b8e
新聞・TV・映画etc. http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a7126ea61f3deb897e01ced6b3955ace
ごあいさつ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/7de1dfba556d627571b3a76d739e5d8c

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