前号「かんわきゅうだい22」ではやや顰蹙を・・・。名誉挽回?に同じくBSで「次世代に伝えたい名曲」と紹介された曲から、私の「断想」をUPします。「2」があるかどうか・・・取り敢えず「名曲断想1」。
なお、いつもはパラグラフ毎にほぼ同字(行)数としていますが、今回は無理・・・(笑)。なお!なお!この季節にふさわしく冒頭は(復活した)QPの絵で和んでいただければ幸いです。
石川さゆり「津軽海峡冬景色」
『上野発の夜行列車おりた時から青森駅は雪の中』。これまでの歌謡曲にこんな歌詞はありませんでした。冒頭のこの散文のような一節こそ阿久悠の天才!なのだと思います。
『・・・北へ帰る人の群れは誰も無口で/海鳴りだけをきいている/私もひとり連絡船に乗り/凍えそうな鴎見つめ泣いていました・・・さよならあなた私は帰ります/風の音が胸をゆする泣けとばかりに/ああ津軽海峡冬景色』。
妻が函館の出身で、私もかつてしばしば青函連絡船に乗りました。青森で降り連絡船を待つ人の群れは、本当に無口です。心がちぎれるほどこの詞が迫ってまいります。
フランク永井「君恋し」
『宵闇せまれば/悩みは涯なし/乱るる心に/映るは誰が影/君恋し/唇合せねど/ 涙はあふれて/今宵も更けゆく』。
文語調でなければこの歌は歌えません。作曲は佐々紅華、その恋人だった高井ルビーの詩 “木枯らし吹きて想いは深し/夕日は沈みてあわれを誘ふ/君恋しわが胸は燃ゆる” をもとに時雨音羽が作詞しました。
フランク永井さん。交通事故で頭に重傷を負いました。一命はとりとめたものの以後言葉を喪い、いつも子どものように、ニコニコと笑っていたそうです。
※ ある方からメールを頂き「交通事故ではなく自殺未遂だった」と・・・。存じませんでした。
本文は敢えて削除・訂正せず、追記といたします。ありがとうございました。
ちあきなおみ「喝采」
『いつものように幕が開き/恋の歌うたう私に/届いた報らせは/黒い縁取りがありました/あれは三年前/止めるあなた駅に残し/動き始めた汽車に/独り飛び乗った/ひなびた町の昼下がり/教会の前に佇み/喪服の私は/祈る言葉さえ喪くしてた』。
夫を亡くした彼女にはもう歌う力はなかったのでしょう。しかしファンには余りに突然の消え方でした。彼女の最大のヒット曲である「喝采」、そのタイトルの華やかさとは裏腹に、ここに歌われた言葉と彼女の去り際とが余りに符合し重なり合います。
水原弘「黒い花びら」
『黒い花びら静かに散った/あの人は帰らぬ遠い夢/俺は知ってる/恋の悲しさ恋の苦しさ/だから だから もう恋なんかしたくない/したくないのさ』。
小学生の頃に聴きました。第一回のレコード大賞受賞曲です。当時、子どもたちは茶化して 「くぅ~ろぉぃ~歯並びぃ~」 などと歌っていました。私には凄いおじさん!の印象が強いのですが、42歳の若さで病死しました。私の息子の歳とそう変わりません。
森進一「襟裳岬」
『北の街ではもう/悲しみを暖炉で燃やし始めてるらしい』。“悲しみを暖炉で燃やし”なんていう詞は阿久悠にしか書けません・・・と思ったら、岡本おさみ作詞でした。作曲はご存知!吉田拓郎です。彼は作曲した作品はわざわざ音(デモテープ)にして提供します。後日、実際に編曲されたトランペットのイントロを聴きひっくり返ります。想像を超える編曲に“演歌ってそういうことか”と納得!したそうです。
『わけのわからないことで悩んでいるうちに/老いぼれてしまうか/黙りとおした歳月を/拾い集めて暖めあおう/襟裳の春は何もない春です・・・寒い友達が訪ねてきたよ/遠慮はいらないから暖まって行きなよ』。
同じ北海道でも、立待岬(函館)などはまさに絵になる風景ですが、襟裳岬に行くと、ほんとうに!何もない岬で、改めてこの歌詞を思います。何もない岬の何もない春、“黙りとおした歳月を拾い集めて暖めあおう”の詞が心にしみます。
※「襟裳岬」について語るのは・・・8分45秒~です。
さだまさし「精霊流し」
『去年のあなたの想い出が/テープレコーダーからこぼれています/あなたのためにお友達も集まってくれました/二人でこさえたお揃いの浴衣も/今夜は一人で着ます/線香花火が見えますか空の上から/約束通りにあなたの愛したレコードも/いっしょに流しましょう /そしてあなたの船の後をついて行きましょう』・・・日記のような、ひとり語りのような、この不思議なスタイルは、さだまさしのオリジナルです。
『あなたの愛した母さんの今夜の着物は浅黄色/僅かの間に年老いて淋しそうです』
「浅黄色」の一語にすべての情景が凝縮され終連に繋がります。
『人混みの中を縫うように静かに時間が通り過ぎます/あなたと私の人生を庇うように』
イルカ(伊勢正三)「なごり雪」
『汽車を待つ君の横で/僕は時計を気にしてる/季節はずれの雪が降ってる/東京で見る雪はこれが最後ねと/淋しそうに君がつぶやく/なごり雪も降る時を知り/ふざけすぎた季節のあとで/いま春が来て君はきれいになった/去年よりずっときれいになった』。
いま春が来て君はきれいになった/去年よりずっときれいになった・・・この歌、この一節がすべて!でしょうか。この歌をもとに作られた映画(大林宣彦監督)も観ました。主演の須藤温子さん、その後お見かけしませんが、惹かれる女優さんでした。
『動き始めた汽車の窓に顔をつけて君は何か言おうとしてる/君の唇が“さよならと”動くことが怖くて下を向いてた・・・君が去ったホームに残り落ちては溶ける雪を見ていた』。70年代に青春を送った者には じ~んときます。個人的には73年春、京都駅にて・・・。
沢田研二「時の過ぎ行くままに」
『あなたはすっかり疲れてしまい/生きてることさえ厭だと泣いた/壊れたピアノで想い出の歌/片手で弾いては溜息ついた/時の過ぎゆくままにこの身をまかせ/男と女が漂いながら/堕ちてゆくのも幸せだよと/ふたり冷たいからだ合わせる』・・・このタイトルの、沢田研二が主演した連続ドラマを憶えています。三億円事件の犯人の役、そのデカダンスな行動と沢田の個性がよく溶けこんでいました。
『からだの傷なら治せるけれど/心の痛手は癒せはしない/小指にくいこむ指輪をみつめ/あなたは昔を想って泣いた/時の過ぎゆくままにこの身をまかせ/男と女が漂いながら/もしもふたりが愛せるならば/窓の景色も変わって行くだろう』。
護憲の歌とも言われる「この窮状」を歌った沢田研二の「還暦全国ツァー」は大阪ドームでナマで聴きました。歌手としても役者としても人間としても私は沢田研二が好きです。
西田佐知子「アカシアの雨がやむ時」
『アカシアの雨にうたれて/このまま死んでしまいたい/夜が明ける日がのぼる/朝の光のその中で/冷たくなった私を見つけて/あのひとは涙を流してくれるでしょうか』。
五木寛之「青春の門」の世代、必然的に60年安保の世代は、この歌が「こころの闘争歌」だったと仰います。
『アカシアの雨に泣いてる/切ない胸はわかるまい/思い出のペンダント白い真珠のこの肌で/淋しく今日も暖めているのに/あの人は冷たい目をして何処かへ行った』。
こんなとき、こんな女性に、冷たい目をして何処かに去る男は・・・男じゃない! と力んでみたところで、仕様がありませんね。柴田翔「されど我らが日々」のラストでも「去り」ますけど、あの展望なき小説では唯一「旅立ち」の匂いに救われるのですが・・・。
『アカシアの雨がやむ時/青空さして鳩が翔ぶ/紫の羽の色/それはベンチの片隅で/冷たくなった私のぬけがら/あの人をさがして遙かに翔び立つ影よ』。
哀しいまでに空しい最期のとき。にもかかわらずその光景はこの世のものと思えない、まるで臨死体験のような煌びやかな世界に思われてきます。西田佐知子さんの(声の)表情に、そのとき微かに笑みが浮かぶのを感じてしきりに愛おしく思いました。
【過去ログ目次一覧】
かんわきゅうだい http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a0b140d3616d89f2b5ea42346a7d80f0
腎がんのメモリー http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/bee90bf51656b2d38e95ee9c0a8dd9d2
ごあいさつ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/7de1dfba556d627571b3a76d739e5d8c
旅行記 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/23d5db550b4853853d7e1a59dbea4b8e
閑話休題 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/c859a3480d132510c809d930cb326dfb
吾輩も猫である~40 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/58089c94db4126a1a491cd041749d5d4
吾輩も猫である~80 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/dce7073c79b759aa9bc0707e4cf68e12
吾輩も猫である81~ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/f9672339825ecefa5d005066d046646f