秋の日の ヴィオロンの ためいきの ひたぶるに 身にしみて うら悲し
鐘のおとに 胸ふたぎ 色かへて 涙ぐむ 過ぎし日の おもひでや
げにわれは うらぶれて ここかしこ さだめなく とび散らふ 落葉かな
・・・ ヴェルレーヌ「秋の詩」より
「知る」「学ぶ」「集う」「わかる」キャンサーフォーラム2015
14日、「キャンサーフォーラム2015」に参りました。こうしたフォーラムは、私の地元医大の「がん医療の最前線※」についで2回目です。講演・映画のほか会場(MBS・・・在阪放送局)ロビーには患者会はじめ様々なサポート団体がブースを出され、がんに関わる正しい理解を深めるとともに人の繋がり・出会いの場にもなっていました。 MBS, good job!
※ 腎がんのメモリー7 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/36f9d25d07974c135a0738cbac299ed2
勝俣範之「”抗がん剤は効かない”の罪」 VS 近藤誠「抗がん剤は効かない」
様々な講演・映画のうち、私が参加したのは「誤解だらけの抗がん剤治療」でした。講師の勝俣範之氏(日本医大病院腫瘍内科)は「がんの総合内科」をめざして診療・研究・講演・著作に幅広く活躍されています。「抗がん剤は効かない」などつぎつぎ著書がベストセラーとなる近藤誠氏(元慶大医学部放射線科)の言わば対極にいる方です(腎がんのメモリー5※)
※ 腎がんのメモリー5 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/4c30adf899185b5096020e8d0da5cda7
勝俣範之氏の著書 VS 近藤誠氏の著書
抗がん剤治療・・・脱毛以外には大した副作用はない方も!
講演の冒頭、子宮体がんで6回目の抗がん剤治療を受けている患者さんがビデオで語りました。がん治療は不要と言われ放置した結果、がんが大きくなり勝俣氏の治療を受けた方です。「髪がごっそり脱けた時は正直!先生を恨みました」「でも脱毛以外には大した副作用はなく、良くなりつつあります」と順調な経過をたどっていらっしゃいます。
抗がん剤に対する三つの誤解
勝俣氏は説きます。『抗がん剤には ”三つの誤解 ”があります。すなわち ①効かない ②身体がボロボロになる ③仕事が出来なくなる、といった誤解です』
『①効かない・・・効かない薬もあります。しかし白血病など ”治癒 ”が可能です。固形がんでも延命・改善・緩和効果が認められ、新薬がつぎつぎ出ています』
『②身体がボロボロ・・・脱毛は避けられません。それ以外の副作用は個人差が大きく、症状緩和に積極的に対処しているほか、副作用の少ない分子標的薬がふえています』
『③仕事できなくなる・・・日本では抗がん剤治療は原則入院ですが、欧米では原則通院です。日本もじき原則通院に変り、仕事しながらの治療が可能になります』
抗がん剤の種類
『化学療法では細胞を殺す薬を処方するためがん細胞以外への作用が避けられません。分子標的薬は浸潤・増殖・転移に効率よく作用し副作用はかなり減りました。最も副作用が少ないのはホルモン療法ですが、効果は乳がんなどごく一部の固形がんに限られます。なお、最近「免疫的な処理(作用)をする分子標的薬(ニボルマブなど)が出つつあります』
QOL(生活の質)を保って治療することが大切
『抗がん剤は、①治癒をめざす ②治癒率UPをめざす ③がんとの共存(QOL向上)をめざすなど患者の状況によって処方が異なりますが、とりわけ「がんとの共存」が大切です。早く治したい、治療に集中したいと強力な抗がん剤治療を希望し懸命に耐える方がいますが、QOLを無視した過剰投与も、逆にむやみに薬を減量して効果を失うのも避けたいところです』
がん治療をコーディネイトするメディカル・オンコロジスト(腫瘍内科医)
「腫瘍内科医」とは何か・・・。『がん治療では、肺なり腎臓なり臓器毎に専門医がいますが、手術の多くは外科医が行います。しかし患者の症状によりどんな治療がいいのか、術後のフォローは・・・など外科医には限界があります。そこで医師・薬剤師・看護師などがんのチーム医療をコーディネートするメディカル・オンコロジスト(腫瘍内科医)が生まれました』
進行がんとのつきあい方
『進行がんに上手につきあう心得は ”焦らず慌てず諦めず ”に尽きます。仕事も生き甲斐も何もかも犠牲にして治療に臨むべきではありません。副作用は我慢しないで医師に訴え、医師に言いにくければ看護師なり相談員なり訴えやすい人に訴えてください。医師と相談しつつ生活や仕事にあわせて時に減薬したり休薬したり・・・慌てず諦めずがんばりましょう』
治療法の選択にあたって
『インフォームド・コンセントで、治療法について患者に選択を委ねられることが増えました。難しい選択ですから容易ではありません。わからないことは遠慮なく医師その他病院スタッフに訊いてください。そこで、とりわけ進行したがん患者さんに考えていただきたいのが「緩和ケア」です。ただ、緩和ケア=治療しないで死を待つ・・・は大きな誤解です』
「緩和ケア」で生存期間がのびる
『緩和ケアとは、痛みをやわらげるだけの治療、終末期医療ではありません。三大治療(手術・放射線・抗がん剤)をしながら、がんによる諸症状の緩和・改善を行います。QOLの向上とウツ症状の軽減につとめます。そのことが結果として ”生存期間の延長 ”につながっています。ですから、そうした意味でも緩和ケアとは ”第四の治療 ”と言えるのです』
「余命」とは何か・・・
『余命。私は余命は言いません。がんはすべて複雑で個人差が大きく余命!の的中率はせいぜい3割程度です。死刑囚だって死刑執行日にしか余命は告げられないのに、当らない余命を告げるのは如何かと思います。患者が望むこと・・・家族と普通の生活がしたい、音楽を聴いたり旅を楽しみたい・・・そうした願いを可能な限り叶えるためのフォローも緩和ケアです』
正しい「がん情報」の見方
『医師には、医学論文・学会発表論文がありますが、患者には論文はよくわかりません。そこに<オーソリティの意見>なるものが現われ患者を惑わせます。疑ってみる、信じすぎてはいけません。<食べ物だけで余命3月のがんが消えた>と言われればとびつきたくなります。しかし<消えた>と<治った>は大違いです。<消えた>情報は消す!のが賢明です』
『本が売れない時代に村上春樹さんより売れている本があります。医療を否定する医師が書いた本が20~100万部売れています。それを批判した私の本は1万部も売れません』
『インチキ診療の多くは ① 〇〇免役クリニック、最新〇〇免役療法、奇跡の〇〇療法、〇〇%の患者に効果・・・を唱えるもの ②体験談が多いもの ③健保がきかない高額民間療法。標準診療ではない最新の治療は、患者の人体実験ゆえ治験は無料のはずです』
【Q&A】
Q1.副作用の大きさと抗がん剤の効果は?
A⇒相関性はない。寧ろ副作用を抑えることに主眼をおきつつある。
Q2.がんと食生活の改善効果は?
A⇒予防効果はあるが、一度治療したがん細胞は強力で術後の食事療法で効果があるか疑問(科学的根拠無)
Q3.抗がん剤の治療中にナマモノを食べてもいいか?
A⇒白血球が減り感染し易いと「ナマモノはダメ」。海外のガイドラインでは白血病の治療中を除いてOK。
Q4.抗がん剤の治療は何回でも受けられるか?
A⇒副作用は一過性ゆえ何回でも可。心臓・神経系に作用する抗がん剤は蓄積性があるものは避ける。
Q5.免役療法の保険適用は?
A⇒効果が実証されないと保険適用ナシ。効果なくても自由診療なら可ゆえ健保使えない療法は怪しい。
Q6.抗がん剤が効かなくなったら?
A⇒やればやるほどがん細胞に耐性ができ強くなる。分子標的薬は耐性が少なく、新薬がどんどん出ている。
Q7.緩和ケアはどの時点から始めるべきか?
A⇒緩和ケアも治療の一つ。がん治療開始から始めれば効果大。がんとも治療とも共存して長生きを!
当日の講演のインターネット録画・・・2014年の講演まで見られますが、2015年は後日UP
http://www.cancernet.jp/mbscnj/postvideos
プチオフ会でmokaさんから頂いた幸エ門お守り
フォーラム後、mokaさんとプチオフ会
三人でプチオフ会をする予定でしたが、残念ながら一人はご都合で来られなくなりました。mokaさんは「ベージュのカーディガン」、私は「こげ茶色の片掛けリュック」を目標に待合わせしました。開講直前にmokaさん「デ某さんですか?」 私「はい。初めまして!」。講演が終わった後、夕立の中、隣のビルのカフェへ行き1時間余…初対面の積もる話をしました(笑)。初対面と思えないのが不思議です
うたごえ喫茶へ・・・シマジロウTシャツをプレゼントいただきました
そこから阪急梅田まで歩き流れ解散?して神戸へ。学生時代の後輩の眼鏡店で眼鏡を新調しました。30年来のお付合い、いつも先輩割引です(笑) その後、彼はじめ数人が毎月催しているうたごえ喫茶に行きました。司会は、このブログにPC画を提供頂いているQPです。彼女の描いたシマジロウをプリントしたユニクロTシャツをペアでプレゼントして頂きました(後日、シマがご紹介します)
病と向き合うすべてのかたがたに
休憩をはさんで2時間余、懐かしい曲ばかり30曲余を思いっきり歌いました。その中の、第一部で歌われた「夜明けの歌」に・・・いま大変な状況にある腎がんの友を思い涙がこみあげてきました。あたりまえに生きている、そんな小さな倖せをまもってほしい・・・。腎がんの友にかぎりません。それぞれに病と向き合うすべてのかたがたに どうか健やかな夜明けが訪れますよう心より祈ります
岸 洋子 「夜明けのうた」
夜明けのうたよ/あたしの心の/きのうの哀しみ/ながしておくれくれ
夜明けのうたよ/あたしの心に/若いちからを/みたしておくれ
夜明けのうたよ/あたしの心の/あふれる想いを/わかっておくれ
夜明けのうたよ/あたしの心に/おおきな望みを/だかせておくれ
夜明けのうたよ/あたしの心の/ちいさな倖せ/まもっておくれ
夜明けのうたよ/あたしの心に/思いださせる/ふるさとのそら
【過去ログ目次一覧】
腎がんのメモリー http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/bee90bf51656b2d38e95ee9c0a8dd9d2
ごあいさつ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/7de1dfba556d627571b3a76d739e5d8c
旅行記 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/23d5db550b4853853d7e1a59dbea4b8e
閑話休題 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/c859a3480d132510c809d930cb326dfb
かんわきゅうだい http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a0b140d3616d89f2b5ea42346a7d80f0
吾輩も猫である~40 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/58089c94db4126a1a491cd041749d5d4
吾輩も猫である~80 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/dce7073c79b759aa9bc0707e4cf68e12
吾輩も猫である81~ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/f9672339825ecefa5d005066d046646f