小保方晴子さんを憶えていますか? "STAP" 細胞と名付けられた多能性をもつ細胞の研究が世界的な科学誌 "ネイチャー" に掲載され脚光を浴びた女性です。 "リケジョ" ブームが巻き起こりますが、それから僅か数か月後、マスゴミに囃し立てられた彼女は「捏造の科学者」としてマスゴミに叩き潰され ました。
小保方さん叩きの先頭にいた毎日新聞の須田桃子記者は、小保方さんと同じ早大理工学部出身。言わば理系崩れの方で、一貫して小保方論文を追及し、追及しつつ執筆したと思われる著「捏造の科学者」(文芸春秋刊)は、その年に出版され文芸春秋社主催のその年の大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しました。
その小保方さんが 数年後に著した書のタイトルが「あの日」でした。誰にでもある「あの日」は、人生の輝かしい転機となる「あの日」もあれば 希望を叩き潰される転機となった「あの日」もありましょう。そうした「あの日」、わが子を喪うに至った「あの日」を描いた絵本とその制作の日々が放映されました。
NHK-Eテレ 「日航機墜落事故~遺族の37年~ "そして絵本が生れた"」より(以下同)
日航123便の墜落した1985.8.12は ※ 私自身にも忘れ難い痛恨の「あの日」でした。
※「御巣鷹から30年」... 2015.8.12記 https://blog.goo.ne.jp/00003193/e/c7c04a6236ab9026def403c62a231fda
あの日、123便には 美谷島邦子さんが「夏休みにがんばったご褒美」に送り出したご子息健一くん(9歳)が搭乗していました。美谷島さんは、初めての一人旅に緊張の面持ちだった健くんの「別れ際の手の温もりが今も忘れられない」と。離陸から45分…123便は長いダッチロールを経てレーダーから消えました。
亡くなられた方520人。国内最大の航空機墜落。夏休みであったからか 10歳未満の子どもが50人を超え、美谷島健くんもその一人でした。健くんの母 邦子さんは当時38歳の専業主婦でした。墜落の三日後、邦子さんは木々が薙ぎ倒され赤茶けた地面がなお熱い御巣鷹の尾根に 夫君 照彦さんとともに登りました。
御巣鷹の尾根の眼や肉片の残るまだ熱い地面に泣き崩れる美谷島邦子さん。
遺族による「8.12連絡会」が発足し美谷島邦子さんは事務局長に就きます。
「私が乗せなかったら死なせなくて済んだのに」と自分を責めつづけた邦子さん。8.12連絡会で ともに語り ともに嘆き悲しみ泣いた日々を経て… あの日から20年が過ぎた頃、柳田邦男さん(ルポライター)に出遭います。あの日について語りあう中で、やがて健ちゃんの記憶を物語として残したいと考えはじめました。
『言葉にすることは 脈絡をつけること。絵で表現することは 思いを形で具象化すること』(柳田邦男さん)。柳田さんの妻は絵本作家として名高い いせひでこ さん。美谷島邦子さんと柳田さんの出会いは いせひでこさんの出会いに繋がり、やがて生まれる絵本「けんちゃんのもみの木」誕生の出会いとなりました。
三十冊余の絵本を著しているいせひでこさんですが、美谷島邦子さんに会い話を聴くと絵筆がとれなくなりました。余りに痛ましく酷い現実を描いたことがなかったのです。そんな時、やはり現場を見なくては…と御巣鷹の墜落現場に向かったのが「あの日」から30年後の2015年。震える手でスケッチを始めました。
写真は「あの日」から30年たった頃に出会った美谷島邦子さん(左) いせひでこさん(右)
この絵は そうしたスケッチから最初に描かれた絵です。30年の歳月を経て… 健ちゃんの遺体が見つかった場所に植えられた小さなもみの木は 空へ!と見上げるほどに高く伸び、薙ぎ倒され赤茶けた一帯は森に!生まれ変わっていました。そこから美谷島邦子さんと いせひでこさんの絵本作りが始まりました。
いせひでこさんは美谷島邦子さんの話に『我が身のことだったらとても耐えられない。軽々しく近づけない』と思い、話を聴くほどに『私に描けるだろうか』との恐怖を覚えつつ『目を逸らしてはいけない』とキャンバスに向き合いました。描いては美谷島さんに見て貰い 描き直し また見て貰い 描き直し…。
どの星なの? 見つけたい さがしたい きみのところに いきたい(絵本より)
『さよならが言えなかった さよならが聞きたかったことが 私のこだわり』と仰る美谷島さん。或る日、現場に遺された健ちゃんの運動靴について いせひでこさんから『あの靴を描かせてもらえませんか』とメールがあり 怖くて抱きしめることもできなかったサイズ20cmの運動靴がいせさんのもとに届きます。
健ちゃんの運動靴(左)を「まるで発光している」ように思った いせひでこさんが描いた 運動靴(右)
『この運動靴はこの絵本の心臓だ』と思った いせひでこさん。そして美谷島さんは『絵本が出来上がってはじめて健ちゃんの運動靴を抱きしめることができました』と仰います。美谷島さんの話にそってなんどもなんども絵を描き直してきたいせさんですが、それだけではいけないのではないか、と思い始めました。
『きみはどこにいるの?どこにきえたの?』… 美谷島邦子さんの心にある "こえられない溝"
健ちゃんを探しつづける邦子さんに いせさんが描いた絵は… 一線の飛行機雲と 白いこいのぼりを手に飛行機雲に向かう邦子さんの姿でした。絵を見て邦子さんはすぐ反応し『私の中にあった溝が描かれている』。向こうの世界とこちらの世界を隔つ一線の白い雲。いせさんは『私の解釈も大事かな』と。
美谷島邦子さん いせひでこさん 二人の絵本作りは 2015年から5年にわたりつづきました。絵本が完成し 邦子さんに漸く「さよなら」の聲が聴こえました。邦子さんが孫娘のかりんさん(13歳)に『悲しみってどんなものだと思う?』と問うと、かりんさんは『人を愛するから悲しみがあるのだと思う』。
生まれたばかりの もみの木の葉っぱは けんちゃんの手のように やわらかく あたたかかった
もみの木は 悲しみをききながら 幹は少しずつ 太くなり
悲しみによりそって 根は強く 土の中をすすんだ (絵本より)
※ 「日航123便墜落」について 私は「事故」の表記を出来るだけ避けました。
「未解明の事実 真実があるのではないか?」 との思いからです。
そのことについては拙ブログ「耳に蓋をし 目を閉じ いつの間にか逃げ去る」(2020.10.20) に記しました。
⇒ https://blog.goo.ne.jp/00003193/e/26fe3ea7f7fbc20a5714bbd41e5828a7
【過去ログ目次一覧】
吾輩も猫である~40 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/58089c94db4126a1a491cd041749d5d4
吾輩も猫である~80 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/dce7073c79b759aa9bc0707e4cf68e12
吾輩も猫である81~140 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/f9672339825ecefa5d005066d046646f
吾輩も猫である141~ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/b7b2d192a4131e73906057aa293895ef
人生の棚卸し http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/ddab58eb8da23a114e2001749326f1f1
人生の棚卸し(2) https://blog.goo.ne.jp/00003193/e/22b3ffae8d0b390afee667c0e9ed92ed
かんわきゅうだい(57~) http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/20297d22fcd28bacdddc1cf81778d34b
かんわきゅうだい(~56) http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a0b140d3616d89f2b5ea42346a7d80f0
閑話休題 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/c859a3480d132510c809d930cb326dfb
腎がんのメモリー http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/bee90bf51656b2d38e95ee9c0a8dd9d2
旅行記 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/23d5db550b4853853d7e1a59dbea4b8e
新聞・TV・映画etc. http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a7126ea61f3deb897e01ced6b3955ace
ごあいさつ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/7de1dfba556d627571b3a76d739e5d8c
名残の季節 https://blog.goo.ne.jp/00003193/e/ce82e1c580f64c8ab8d43e2c674a481d
小保方さん叩きの先頭にいた毎日新聞の須田桃子記者は、小保方さんと同じ早大理工学部出身。言わば理系崩れの方で、一貫して小保方論文を追及し、追及しつつ執筆したと思われる著「捏造の科学者」(文芸春秋刊)は、その年に出版され文芸春秋社主催のその年の大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しました。
その小保方さんが 数年後に著した書のタイトルが「あの日」でした。誰にでもある「あの日」は、人生の輝かしい転機となる「あの日」もあれば 希望を叩き潰される転機となった「あの日」もありましょう。そうした「あの日」、わが子を喪うに至った「あの日」を描いた絵本とその制作の日々が放映されました。
NHK-Eテレ 「日航機墜落事故~遺族の37年~ "そして絵本が生れた"」より(以下同)
日航123便の墜落した1985.8.12は ※ 私自身にも忘れ難い痛恨の「あの日」でした。
※「御巣鷹から30年」... 2015.8.12記 https://blog.goo.ne.jp/00003193/e/c7c04a6236ab9026def403c62a231fda
あの日、123便には 美谷島邦子さんが「夏休みにがんばったご褒美」に送り出したご子息健一くん(9歳)が搭乗していました。美谷島さんは、初めての一人旅に緊張の面持ちだった健くんの「別れ際の手の温もりが今も忘れられない」と。離陸から45分…123便は長いダッチロールを経てレーダーから消えました。
亡くなられた方520人。国内最大の航空機墜落。夏休みであったからか 10歳未満の子どもが50人を超え、美谷島健くんもその一人でした。健くんの母 邦子さんは当時38歳の専業主婦でした。墜落の三日後、邦子さんは木々が薙ぎ倒され赤茶けた地面がなお熱い御巣鷹の尾根に 夫君 照彦さんとともに登りました。
御巣鷹の尾根の眼や肉片の残るまだ熱い地面に泣き崩れる美谷島邦子さん。
遺族による「8.12連絡会」が発足し美谷島邦子さんは事務局長に就きます。
「私が乗せなかったら死なせなくて済んだのに」と自分を責めつづけた邦子さん。8.12連絡会で ともに語り ともに嘆き悲しみ泣いた日々を経て… あの日から20年が過ぎた頃、柳田邦男さん(ルポライター)に出遭います。あの日について語りあう中で、やがて健ちゃんの記憶を物語として残したいと考えはじめました。
『言葉にすることは 脈絡をつけること。絵で表現することは 思いを形で具象化すること』(柳田邦男さん)。柳田さんの妻は絵本作家として名高い いせひでこ さん。美谷島邦子さんと柳田さんの出会いは いせひでこさんの出会いに繋がり、やがて生まれる絵本「けんちゃんのもみの木」誕生の出会いとなりました。
三十冊余の絵本を著しているいせひでこさんですが、美谷島邦子さんに会い話を聴くと絵筆がとれなくなりました。余りに痛ましく酷い現実を描いたことがなかったのです。そんな時、やはり現場を見なくては…と御巣鷹の墜落現場に向かったのが「あの日」から30年後の2015年。震える手でスケッチを始めました。
写真は「あの日」から30年たった頃に出会った美谷島邦子さん(左) いせひでこさん(右)
この絵は そうしたスケッチから最初に描かれた絵です。30年の歳月を経て… 健ちゃんの遺体が見つかった場所に植えられた小さなもみの木は 空へ!と見上げるほどに高く伸び、薙ぎ倒され赤茶けた一帯は森に!生まれ変わっていました。そこから美谷島邦子さんと いせひでこさんの絵本作りが始まりました。
いせひでこさんは美谷島邦子さんの話に『我が身のことだったらとても耐えられない。軽々しく近づけない』と思い、話を聴くほどに『私に描けるだろうか』との恐怖を覚えつつ『目を逸らしてはいけない』とキャンバスに向き合いました。描いては美谷島さんに見て貰い 描き直し また見て貰い 描き直し…。
どの星なの? 見つけたい さがしたい きみのところに いきたい(絵本より)
『さよならが言えなかった さよならが聞きたかったことが 私のこだわり』と仰る美谷島さん。或る日、現場に遺された健ちゃんの運動靴について いせひでこさんから『あの靴を描かせてもらえませんか』とメールがあり 怖くて抱きしめることもできなかったサイズ20cmの運動靴がいせさんのもとに届きます。
健ちゃんの運動靴(左)を「まるで発光している」ように思った いせひでこさんが描いた 運動靴(右)
『この運動靴はこの絵本の心臓だ』と思った いせひでこさん。そして美谷島さんは『絵本が出来上がってはじめて健ちゃんの運動靴を抱きしめることができました』と仰います。美谷島さんの話にそってなんどもなんども絵を描き直してきたいせさんですが、それだけではいけないのではないか、と思い始めました。
『きみはどこにいるの?どこにきえたの?』… 美谷島邦子さんの心にある "こえられない溝"
健ちゃんを探しつづける邦子さんに いせさんが描いた絵は… 一線の飛行機雲と 白いこいのぼりを手に飛行機雲に向かう邦子さんの姿でした。絵を見て邦子さんはすぐ反応し『私の中にあった溝が描かれている』。向こうの世界とこちらの世界を隔つ一線の白い雲。いせさんは『私の解釈も大事かな』と。
美谷島邦子さん いせひでこさん 二人の絵本作りは 2015年から5年にわたりつづきました。絵本が完成し 邦子さんに漸く「さよなら」の聲が聴こえました。邦子さんが孫娘のかりんさん(13歳)に『悲しみってどんなものだと思う?』と問うと、かりんさんは『人を愛するから悲しみがあるのだと思う』。
生まれたばかりの もみの木の葉っぱは けんちゃんの手のように やわらかく あたたかかった
もみの木は 悲しみをききながら 幹は少しずつ 太くなり
悲しみによりそって 根は強く 土の中をすすんだ (絵本より)
※ 「日航123便墜落」について 私は「事故」の表記を出来るだけ避けました。
「未解明の事実 真実があるのではないか?」 との思いからです。
そのことについては拙ブログ「耳に蓋をし 目を閉じ いつの間にか逃げ去る」(2020.10.20) に記しました。
⇒ https://blog.goo.ne.jp/00003193/e/26fe3ea7f7fbc20a5714bbd41e5828a7
【過去ログ目次一覧】
吾輩も猫である~40 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/58089c94db4126a1a491cd041749d5d4
吾輩も猫である~80 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/dce7073c79b759aa9bc0707e4cf68e12
吾輩も猫である81~140 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/f9672339825ecefa5d005066d046646f
吾輩も猫である141~ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/b7b2d192a4131e73906057aa293895ef
人生の棚卸し http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/ddab58eb8da23a114e2001749326f1f1
人生の棚卸し(2) https://blog.goo.ne.jp/00003193/e/22b3ffae8d0b390afee667c0e9ed92ed
かんわきゅうだい(57~) http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/20297d22fcd28bacdddc1cf81778d34b
かんわきゅうだい(~56) http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a0b140d3616d89f2b5ea42346a7d80f0
閑話休題 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/c859a3480d132510c809d930cb326dfb
腎がんのメモリー http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/bee90bf51656b2d38e95ee9c0a8dd9d2
旅行記 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/23d5db550b4853853d7e1a59dbea4b8e
新聞・TV・映画etc. http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a7126ea61f3deb897e01ced6b3955ace
ごあいさつ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/7de1dfba556d627571b3a76d739e5d8c
名残の季節 https://blog.goo.ne.jp/00003193/e/ce82e1c580f64c8ab8d43e2c674a481d