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Channel: デ某の「ひょっこりポンポン山」
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最悪のシナリオか? 希望を生むポジティブな未来か?

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 Eテレ「パンデミックが変える世界」は、今回のパンデミックのもつ意味の大きさに「眼から鱗」でした。登場した世界の知性三人は、ひと頃であれば「アカ!」とレッテルを貼られるでしょうが、今の時代状況には「アオ!」と声をかけたくなる論調、提言でした。
 なおインタビュアーはNHKワールドキャスターの道傳愛子さんです。

イアン・ブレマーさん(米国)
....「Gゼロ後の世界」を著し、指導者(国)なき世界で「最も深刻な危機が発生している」「世界秩序は激変する」と予言しています。解決策の一つに「犬を飼うことです」を挙げられましたが、正解かも…(笑)


    喜劇俳優のように表情豊かなイアン・ブレマーさん。後方の絵はこの方のお気に入りかな?

【道傳キャスター】 今回のパンデミックと世界の状況をどう読み解かれますか?

 今回の危機は「Gゼロ世界」すなわち指導者なき世界で私達が経験する最初の危機ですが、この危機に各国がバラバラに対応し協調性がありません。
 2001年の「9.11」も2008年~の世界金融危機も米国のリーダーシップで世界恐慌の事態を回避できました。今、このコロナ危機にあって世界は最も深刻な事態であるにもかかわらず、G7の協調もG20の協調もありません。米国のリーダーシップなどもはや存在しません。世界の秩序は激変するでしょう。
 豊かな国では、苦痛を伴い死者が出ても社会不安はそれほど深刻化しませんが、貧困に喘ぐ発展途上の国がパンデミックの最も深刻な影響を受け、家族の命も守れなくなります。体制の崩壊につながり、それがテロの温床にもなります。そうした弱い国をどう支援するか、豊かな国の側でこそ考えるべき問題なのです。

【道傳】 悲観的な見解をおききしました。コロナパンデミックに対し各国は連携して立ち向かえるでしょうか? それとも自国ファーストで行動するのでしょうか?

 この先、人類は地球規模の危機に以前のような強さを持てないでしょう。コロナの影で環境問題は置き去りにされていますし、当面する自分の問題に釘付けです。民族主義、ポピュリズムの広がりにも対応できていません。
 米中対立が深まる一方、パンデミック後の世界で中国の存在感は確実に高まります。世界的リーダーシップを放棄した米国とは対照的です。それがこれまでの世界情勢との顕著なちがいです。また世界中で「持つ者と持たざる者」の差が拡がります。強い国は生き残れても貧しい国は大きな打撃を受けます。

【道傳】 市民社会のレベルでは如何でしょうか? 社会の在り方や個々人の生き方を考え直さねばならなくなりますか?

 犬を飼うべきだと思います。気がまぎれます。毎朝、瞑想するのも良いでしょう。バカバカしく思うかもしれませんが、実効性があります。
 いつもと少しちがうことをする必要があります。9.11ではみな同じ思いをもち、同じ体験をして団結しました。人々は外に出て手を差し伸べました。しかし今回はみんな「引き籠ること」を求められています。人間性が奪われようとしています。人間は社会的生きもの、社会的存在です。人間性を取り戻す個人的努力が必要となるでしょう。

ユヴァル・ノラ・ハラリさん(イスラエル)
.... ヘブライ大学教授。「サピエンス全史」で人類の過去を、「ホモ・デウス」で人類の未来を、そして「21 Lessons」では人類の現在!を問うベストセラー作家でもあります。写真↓から日本趣味も? 


    ユヴァル・ノラ・ハラリさん。朝日新聞(4/14)インタビューでも「ここが政治の分かれ道」と。

【道傳キャスター】私達は今、コロナが世界史を変える決定的瞬間に立っていますか?

 世界の変化が加速度を増す時代に立ち、次の2~3か月に世界が根底から変わる壮大な社会的・政治的実験に立ち入ろうとしています。
 労働者の雇用は深刻になり、組織労働者の弱体化が進みます。経済システムと雇用市場の関係も作り変えられるでしょう。メディアも市民もウィルスの感染状況にのみ関心を向けるのではなく、政治的状況も注視していただきたく思います。

【道傳】 新型コロナと権力の関係ですが、政治権力はこの危機的状況にあってこれまでにない権力を手にしましたが、これは何をもたらすとお考えですか?

 ファシズムが台頭する危険があります。ハンガリーで、オルバン政権が独裁的な権力を握りました。ハンガリーで起きたことは何処でも起きます。民主主義が崩壊するのは歴史的にいつも緊急事態が起きたときですから。
 独裁者は、間違いを犯しても認めず謝罪せず隠ぺいさえします。メディアも管理下に置き隠ぺいは問題にされません。間違いは何度も繰返され、時に責任転嫁されます。政府が間違いを冒せばそれを正してこそ民主主義は健在なのですが…。

【道傳】 政府が国民の信頼を得るにはどうしたらよいのでしょうか? また今の状況は市民に課された試練だとお考えですか? 市民はどう行動すべきですか?

 コロナ危機で科学者、専門家を信頼することの重要性が際立ってきました。コロナに限らず様々な分野の専門家をもっと信頼すべきです。
 政府の側ばかりではなく市民にも責任が生じます。情報や行動レペルで、科学的な指針を理解し協力、実行すること、そして政治に目を光らせることが求められます。

【道傳】 あなたの著「サピエンス全史」から見てパンデミックをどう捉えますか?

 人類は、このウィルスよりずっと強いし、過去にもっと深刻な感染症を生き抜いてきた経験があります。いずれにせよ人類にかかった問題に私達人類が結末を下します。
 自国優先の孤立主義や独裁者…を選ぶ結末では歴史的な大惨事となります。多数の生命が奪われ、経済は危機に瀕します。逆に、世界中と連帯し民主的で責任ある人を選び、科学を信じる道を選べば 後に 「人類にとって悪くない時期だった」と思えるでしょう。なぜなら ウィルスに対してだけではなく 我々の内なる悪魔を打ち破ったと言えるのですから。
 私達の対処は、憎悪や幻想、妄想を克服した時期、真実を信頼した時期として、また人類がより強く団結した種になれた時期として、歴史に位置づけられるでしょう。

ジャック・アタリさん(フランス)
.... EU発足の「影の立役者」と呼ばれる経済学者です。ハラリさん、ブレアーさんが自説を演説風に語られるのに対し、最も”対談らしい”簡潔な受け答えが印象的です。写真↓後方…竜安寺の石庭かな?


   無精ヒゲのおじいさん?はジャック・アタリさん。好き!になる緩い?風貌ですが…舌鋒鋭い!

【道傳】あなたが著書で『今後10年で破滅的なパンデミックが発生する』と予言した通りのことがいま起きているとお考えですか?

 予言に対しては、確率として低くても耳を傾けるべきでした。そのリスクが高いとすればすぐ行動を起こすべきでもあります。一人の人が生きる時間は短いのですから。

【道傳】 ロックアウトが広がる中、感染の拡大が終息する兆しが見えません。パリ市民はこの危機にどう対処していますか?

 フランスは規律重視の中央集権国家ですから、政府がひとたび決定すれば国民はみな最善を尽くします。医療・食料・流通・清掃など絶対に必要な仕事を担う大勢の人が懸命に働いています。ただ階層によっては困難も生じています。ロックアウト下では、貧富の差によって行動が変わらざるを得ません。

【道傳】 世界経済への打撃はどれぐらい深刻になると思いますか?

 最悪の事態を避けるためには、最悪を予想しなければなりません。1929年の世界大恐慌以降では、2008年の金融危機以上に深刻で、世界経済の損失は総GDPの20%に及び、世界最強の米国でさえ何の備えもなくこの危機に陥りました。各国の財政当局が打つ手も、結果を先延ばしするだけです。
 なお、たとえ最初の波を封じ込め終息したとしても、第二波が来て第一波を上まわる犠牲者が出ます。1918年のスペイン風邪がそうでした。


            インターネットインタビューの様子…道傳さん(左)とアタリさん(右)

【道傳】「最悪のシナリオ」があるとすれば、どんなシナリオでしょうか?

 世界恐慌、失業、インフレ、ポピュリストの政府誕生など暗黒の時代に入ることです。新しいテクノロジーを駆使し国民の管理を強める独裁主義が広がるでしょう。

【道傳】 そのインパクトは? 民主的政権が強権を握ることもあれば、大衆が強権政治を支持することもありますが、それは民主主義にとってどんな意味を持つでしょう?

 安全をとるか自由をとるか、の選択肢に、大衆は、自由より安全を選択します。「強い政府」 を求めるからですが、強い政府と民主主義は両立し得るものです。第二次大戦下の英国が「強い政府」でありつつ「民主主義」でもあった好例です。

【道傳】 パンデミックで 差別や分断が以前より目立つことが懸念されていますが…。

 そのとおりです。連帯のルールが破られ利己主義がはびこる危険が高まりました。
 経済の孤立主義から”他国に依存し過ぎるべきではない”というのは一面の事実ですが、国境を閉ざすことはありません。バランスのとれた連帯を目指すべきです。

【道傳】 あなたの 「ポジティブに考えて生きよう」 など楽観主義が印象的ですが、
その考えはどこから来ているのでしょうか。

 試合を観戦しながらチームの勝ちを考えるのが楽観主義です。ポジティブ主義は、試合に参加し、こうプレーすれば勝てると考えることです。
 私は、人類はこのコロナとの戦いに勝てると考えています。医療の最善を尽くし世界規模で経済を変革できれば、必ず勝てます。今は、ポジティブ経済…長期的視野に立ち”命の産業”たる食料・医療・教育・文化などに重点を置く経済に向かう好機です。

【道傳】 人も国も利己主義に走る中で、あなたの唱える 「利他主義」 とは?

 利他主義とは 「合理的利己主義」です。コロナでたとえれば”自らが感染しないために他者の感染を食い止める” 利他的すなわち利己的でもあります。経済的には、他国が栄えれば市場が拡大し長期的に自分達の国益になるとの考え方で、現状ではこの危機に勝てませんが、経済を全く新しい方向に変革すれば勝てると思います。

【道傳】 あなたは 「人類は恐怖を感じる時にのみ大きく進化する」と仰っていますが?

 恐怖や大惨事を望むわけではありませんが、破滅的な状況では魔法を使ってでも鎮めたいと思います。ポジティブな社会すなわち「共感のサービス」に向かわなければなりませんが、鎮まれば元の社会に戻る可能性もあります。人間にはそうした弱さがあり、その弱さと闘い克服しなければなりません。その点では、選挙で投票を通じて政治に参加し、親として一市民として 「次世代の利益となる」 選択、行動をすることも、新しい希望を生むことにつながります。


                          新緑の杜にて Painted by QP

 インタビューを終えた道傳キャスターの感想、締め括りは…

 まさに世界をリードする知識人の三人。
 私達が同じ時間を生きているということをこれほど実感したインタビューはありませんでした。三人に通底していたのは、「今、人類の未来を左右する重要な選択を迫られている」という確信でした。パンデミックに向き合うとは、あるべき未来を私達自身が手繰り寄せることなのです。   

  I ニセ!ビートルズ " I Gotta Wash My Hands"
   様々 なコピーバンド、パロディがありますが… 抱きしめたい! ではなく 手を洗いたい!
     https://www.youtube.com/watch?v=OxOJ7hh3H-I&feature=emb_err_watch_on_yt
   映像・音声は出ません。クリック後の画面のアンダーライン箇所かをクリックして下さい




【過去ログ目次一覧】
吾輩も猫である~40 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/58089c94db4126a1a491cd041749d5d4
吾輩も猫である~80 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/dce7073c79b759aa9bc0707e4cf68e12
吾輩も猫である81~140 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/f9672339825ecefa5d005066d046646f
吾輩も猫である141~ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/b7b2d192a4131e73906057aa293895ef
人生の棚卸し http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/ddab58eb8da23a114e2001749326f1f1
人生の棚卸し(2) https://blog.goo.ne.jp/00003193/e/22b3ffae8d0b390afee667c0e9ed92ed
かんわきゅうだい(57~) http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/20297d22fcd28bacdddc1cf81778d34b
かんわきゅうだい(~56) http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a0b140d3616d89f2b5ea42346a7d80f0
閑話休題 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/c859a3480d132510c809d930cb326dfb
腎がんのメモリー http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/bee90bf51656b2d38e95ee9c0a8dd9d2
旅行記 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/23d5db550b4853853d7e1a59dbea4b8e
新聞・TV・映画etc. http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a7126ea61f3deb897e01ced6b3955ace
ごあいさつ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/7de1dfba556d627571b3a76d739e5d8c

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