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ON プーチン

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 オリバー・ストーン(映画監督)が自らインタビュアーをつとめ1年半にわたり収録したロシア大統領プーチンとの対談「オリバー・ストーン ON プーチン」。予めルールを定めないガチ!の対談、プーチンの正味の人物像が露出した興味深いドキュメントでした。
 【ウラジミル・プーチン】65歳(1952.10.7生) ロシア連邦第4代大統領(2012年~)
           レニングラード(現サンクトペテルブルク)大学を卒業後、KGBに勤務。
           ロシア連邦第5代首相(1999年) 第2代大統領(2000~2008年)を歴任。



 プーチンという男が大嫌いでした。大国の指導者なる者がそもそも信用し難く、とりわけプーチンには「相手を感情的に威嚇する危険な政治家」の印象が拭えませんでした。しかしこのドキュメントを視てイメージが一変、少なからず敬意を抱くようになりました。

 それこそ感情的な某大国のジョーカー大統領、更にもう一つの大国の無表情な男であれば、なんでもあり!のこんな会見(インタビュー)は拒否したでしょう。況やどこかのお坊ちゃん首相に至っては質問の「事前通告」を受けても逃げるにちがいありますまい。


      カメラはプーチンの足も手を遠慮なくブシツケにUPでうつし撮ります。

 ごく普通の労働者の家に生まれ、十代初め頃までツッパリを通します。柔道と出会って心身ともに柔かくなり大学に進学、卒業後はKGB(国家保安委員会)に勤務します。自ら就職先を決められない旧ソ連邦にあって、KGBは「自身の希望と同じ」だったそうです。

 KGBは、米国で言えばCIAにあたります。スパイの元締のイメージがつきまといますが、(何処の情報・保安機関も)市民生活、経済活動の実情を客観的かつ正確に把握するところに主たる使命がありましょう。そうした認識なくして国は治められませんから。


      (左)十代はじめ、ツッパリだった頃 (右)若い頃の柔道着のプーチン。

 プーチンは東ドイツなど東欧諸国のKGB機関で働きます。「このままでは現在の体制はダメになる」ことを正確に!認識します。当時の指導者も改革の必要性は理解していましたが、「どう改革を成し遂げるか、わからなかった」「だからソ連邦は崩壊した」と。

 東欧社会主義が瓦解し「社会保障も医療も教育も軍の規律さえもガタガタになる」のを目の当たりにした彼は、「民族のちがいをこえ一つのイデオロギーで同胞であった人々が、一夜にしてバラバラになり、お互いがみな外国人になった大惨事」と形容します。

 その混乱の中で彼は頭角を表わしました。国内の反対勢力と闘いつつ改革を断行、NATOに加わりロシアに敵意を隠さない周辺の旧ソ連邦国と対峙、米欧各国、中国ほかアジア諸国と伍してきたプーチン。どの指導者より修羅場を経てきた自負が表情に滲みます。


    新興財閥たちを一堂に集め改革への協力を求める。財閥の顔ぶれのなんとまあ若いこと!

 共産党組織と長老政治の下、47歳の若さで首相となったプーチンは、ただの野心家ではなさそうです。エリツィン大統領から「首相に」と命じられた彼は、首相在任中は勿論、(野に下り)警護がなくなった時、家族を護る方策に確信が持てない、と辞退します。

 「最初に、子どもをどこに隠せばいいのか考えた」。方策は見つからなかったが、やがて「それが運命なら行きつくところまで行ってやろう」。心身が明らかに弱っていたエリツィンを間近に見てきたプーチン、「鍛えた身体は激務に耐える」自信がありました。


      大統領だったエリツィン(左) の下で首相として働いていた当時のプーチン(右)

 プーチンは5回暗殺されかけました。50回暗殺されかけたカストロは「自分の身は自分で護ったから殺されなかった」と語ったそうですが、プーチンは「私の身は専門家に任せている。ロシアには、絞首刑になる人間は溺れ死ぬことはない、との諺がある」と。

 ストーンは訊ねます。「あなたにはどんな運命が待っていると思うか?」。プーチン「それは神のみぞ知る」。ストーン「ベッドの上で死ねると思うか?」。プーチン「その日は総ての人に訪れる。それまで何を為し遂げ人生をどれだけ楽しめたかが大切だ」。


   キューバのカストロ(右)と。歴戦の老勇士カストロにとってプーチンは子どもみたいなもの?

 プーチンがインタビューの約束時刻に6時間遅れた時、ストーンが理由を問うと「皆さんに少し休んでもらおうと思ったのです」と笑わせ、7月4日のインタビューで「お祝いを言ってほしい」と言うストーンに、「今日はあなたの国の独立記念日ですね」と。

 金融政策には自信満々。「米国の債務は18兆ドル(2千兆円超)、GDPに匹敵する」「ロシアはGDPの13%。加えて十分な外貨準備がある」「ロシアは旧ソ連邦すべての国々のIMFからの借金を代って全額返済した」。ストーンも突っ込めませんでした。

 ストーン「どんな質問にもあなたは理路整然と答えるが、Bad Day(気分の悪い日)でもそうですか?」。プーチン「私は女性ではないので Bad Day はない」。ストーン「その言葉は女性を敵にまわすのでは?」。プーチン「侮辱するつもりはない。自然の摂理だ」。


     オリバー・ストーン(右)って、なんとなくキンキン(愛川欽也)に似てませんか?

 米国で同時多発テロ(9.11)が起きた日、プーチンはすぐブッシュ大統領に電話し「ロシアは核戦略部隊の演習を中止する。ロシアにできることがあれば協力する」と申し出ます。「ロシアが闘っているのは米国ではない。ロシアもテロと闘っている」と。

 その一方でプーチンは「我々がアフガニスタンでテロ組織と戦っていた時、米国はロシアと闘う勢力としてアルカイダを援助し育てていた」「テロ組織を育てた米国がテロ組織に手を焼いている」「米国がテロ組織を援助した証拠は米国大統領に渡してある」と。

 プーチンは語ります。「ワルシャワ条約(ソ連の軍事条約)機構を解体し、同時にNATO(西側軍事条約機構)を東独より東(ソ連側)には拡大させない約束があった。しかしワルシャワ条約機構がなくなるとNATOは旧ワルシャワ条約国まで加盟させ拡大した」。


      第43代米国大統領ブッシュ(左) 第42代米国大統領クリントン(右) と会談。
 
 「冷戦が終わりABM条約(戦略的核ミサイルを迎撃するシステムの開発を抑制する条約)が結ばれた。しかし米国は一方的に条約を破棄した。米国は一貫してロシアを敵視している。ロシアの周りをNATOの長距離ミサイルが取り囲めばロシアも対抗せざるを得ない」。

 「クリントンに言ったんだ。いっそロシアがNATOに加盟しようか?と。クリントンは、ぜひとも!と応えたが、傍にいた米国代表団は困っていた。ロシアがNATOに加盟し発言権を持てば、米国がNATOを使ってロシアを封じることが難しくなるからね」。

 「ソ連邦が解体し、米国は何をしても大丈夫だと勘違いした。その傲慢が、情況を分析したり結果や影響を見きわめる努力をマヒさせている。そんなことをしていると、やがて国家は能力を喪失し失敗の連鎖が始まる。失敗と悪循環はすでに始まっている」。

 プーチン「世界で最初に核兵器を作り使ったのは米国だ」。ストーン「実戦能力で米国がロシアより優位だと恐れてそう言うのか?」。プーチン「ノー!」。ストーン「では最後に生き残るのはロシアだと考えているのか?」。プーチン「勝者などいない」。



 プーチン「防衛(ミサイル迎撃)システムで国土を護ることはできない。護れると錯覚することが脅威になる。そう錯覚して一段と攻撃的になる。一方的な攻撃を未然に防ぐことが重要であり、だからこそABM条約で協力することをロシアは米国に求めている」。

 プーチン「世界に主権国家は殆どない。大抵の国が大国に同盟国としての義務ばかり負わされている。自らの意思で自らの主権を制限している」。いったいどのクチからそう語れるのか?と思いましたが、そこに強烈な自国愛と他の大国への敵愾心を見ました。



 マッチョでスポーツオタク。ジムでの筋トレ、柔道の稽古を欠かさず、執務室には講道館の嘉納治五郎の銅像があります。氷のリンクを滑れなかった彼が、60歳にして氷上の格闘技アイスホッケーに興じ、「柔道のお蔭で大きな怪我をしたことがない」と。

 インタビューは車中でも行われます。車の運転をするのはプーチン本人、ストーンは後部席。ストーン「同性婚をどう思うか?」。プーチン「同性婚には反対だ、子供が生まれないから。国にとって子供は宝なのだ。しかし同性婚の人々を迫害はしない」。

 ロシアは世界で最もイスラム教徒の多い国です。プーチン「ロシアでは各々異なる宗教を信仰していても、みなロシア人だ。社会主義になってからではない。ロシアには、移民によってではなく、もともとロシアに根づく多民族・多宗教で千年以上の歴史がある」。


   車を運転しながらインタビューに応じるプーチン。他の大国ではちょっと考えられません。

 私より少し年下のプーチン。年下だからと言うのではありませんが、生意気なヤツやなぁ!と。しかしこのフランクさ、気取りのない率直な物言い、家族への愛、マッチョぷり・・・なかなかニクイ!男ではあります。少なくともどこかのお坊ちゃんよりマシ!

  ※ 写真は 3.1~2 放送の BS101「世界のドキュメント:オリバー・ストーン ON プーチン」より。

  英国BBCがオリバー・ストーン監督にインタビュー「プーチン大統領を信じる」


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吾輩も猫である~40 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/58089c94db4126a1a491cd041749d5d4
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