ボンボン山(678m 高槻市)より北摂連山を眺む
どこが芥川賞?
庄司薫「赤頭巾ちゃん気をつけて」が芥川賞を受賞したのは私の学生時代。早速!読んだ感想は「なに?これ!」「どこが芥川賞?」でした。賞のイメージにその前年の丸谷才一「年の残り」、更に数年前の柴田翔「されど我らが日々」のイメージがありました。
この人は大成しない・・・
書店に平積みされ映画化され、「芥川賞が変った」と言われました。私はちっとも面白くなく、不遜にも「この人は大成しないだろう」と思い、事実!大成されませんでした。なぜか「愈々70年代を迎えるんだ」との妙な(ワケわからん?)感慨がありました。
スタイル(文体)
一般演習の教員が芥川賞を話題にしたので「どこを評価されますか?」と訊くと、「スタイル、文体でしょうね」と。なるほど!と思いました。面白くもなかったのに、アレを読んでからというもの、私の書く文章は「赤頭巾・・・」風になっていましたからねぇ。
庄司薫を読むなら・・・
前記一般(教養)演習は一回生対象に第二外国語の選択でクラス編成されていました。ドイツ語が専門の方で、どうでもいいこと?ながら奥様はピアニストでした。まあ文学好きの教員だったのでしょうね、「庄司薫を読むなら福田章二も読むといいよ」と・・・。
※ そう言えば庄司薫のおつれあいはピアニスト中村紘子さんでした。
芥川賞には寧ろ・・・
ご存知の方も多いと思いますが、庄司薫と福田章二は同一人物です。芥川賞を受賞する10年ほど前、まだ学生時代に福田章二の名で書いた「喪失」が中央公論新人賞を受賞しました。「赤頭巾ちゃん・・・」よりはるかに短編で寧ろ芥川賞に似つかわしい作品です。
やはり!「喪失」
19歳の時に書いた「蝶をちぎった男の話」、20歳の「喪失」、21歳の「封印は花やかに」の3篇から成り、「蝶を・・・」は最も短く、「封印・・・」は最も長い作品です。いずれも似た雰囲気ながら、やはり!と言うべきか「喪失」が最も印象的ではあります。
特に奨める書ではない「喪失」・・・そのエンディング(抄録)
『達夫は私の視線のもとで最後的に傷つくだろう。決定的な屈辱感に打ちひしがれるだろう。私は、自から積極的に喪失したのだというささやかなヒロイズムを楽しむだろう・・・午後の太陽は少しも衰えず陽気な熱と光を投げかけていた。私はふと、この太陽が、この庭の明るさが空気が植物が、一時間程前私がこの庭に出て眠気に包まれ始めていた時と全く変っていないということに、驚きの目を見張ったのだった』
由良川畔にて(京都:和知)
喪失・・・。それはなにもかも青春時代に繋がります。しかし、とうにリタイアし、とうに還暦を過ぎ、病気知らずの傲慢な日々からそれなりに命に関わる病を経、無為と有為の狭間にて日々を送りつつ想うのは、つまるところ自身の総てを喪失する・・・最期の光景。
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