Quantcast
Channel: デ某の「ひょっこりポンポン山」
Viewing all articles
Browse latest Browse all 587

最後の恋

$
0
0


 今朝は冷え込み、今冬三度目の積雪がありました。薄雪の拙庭に咲く蝋梅もやや異なる趣を醸しています。それは兎も角、本稿は本来シマジロウ・マター?ですが、春眠暁を覚えず、否、寒さに縮こまり炬燵から出ようとしませんので、やむなく私が書きます。

 さて、ちょうど2か月前。殆どTVを視ない妻が珍しく大笑いして視入っていました。『京都祇園の29日間/夏目漱石 最後の恋』の見出しに惹かれたのでしょう。昨年12月10日に放送された「漱石悶々」、私は録画したまま忘れ今頃になって視ました。

     

 漱石が亡くなったのは大正5年12月9日、享年49歳。今の私には若造!の年齢ですが、勿論!精神年齢は遥かに老成していたことでしょう。その亡くなる前年の春、漱石は生涯3回目の京都の旅に出ます、支度する妻鏡子の厭味を愛猫と聴きつつ...(写真上)

 鏡子の厭味は『私は伊勢も高野(山)も行ったことはありません。いつか連れて行ってくださいな』。これに対する漱石の一言『それは、紺屋の明後日(こんやのあさって)』。「紺屋の白袴」は聞いたことありますが・・・。これ、実はもう一つの場面にも出てきます。
 ※紺屋の明後日・・・「紺屋の言うことはアテにならない」の意。「紺屋」と「高野」の掛け言葉の由。

     

 旅のきっかけは、漱石山房の文人の一員であり漱石「道草」「明暗」の装丁も手がけた画家、津田青楓の招きによるとされています。汽車は京都駅(当時は「京都七条駅」)に着き青楓が出迎えます(写真上)。SLは梅小路の蒸気機関車博物館にあるホンモノかな?

     

 京都のロングステイ?は宿はじめ総て津田青楓が段取りしました。漱石役は、意外なほどハマって!いた「トヨエツ」こと豊川悦司。そしてこの青楓役は、朝ドラ「べっぴんさん」ですみれの娘さくらが惚れ振られるジャズマン「ジロー」を演じる林遣郎です。

     

 京都では「一力」はじめ様々なところを案内されます。展開にあわせて視聴者を京都観光に誘うところでしょうが、流石!NHK、そのあたりは実に控え目。そしてその京都で漱石の心を捉えたのは祇園のお茶屋「大友」の女将、磯田多佳(宮沢りえ)でした。

     

 「春の川を隔てて男女かな」(写真上)。漱石が多佳におくった句です。「隔てて」にまた含蓄あるいは含羞?を覚えます。否...漱石の「最後の恋」の相手と知れば、ここは含蓄でも含羞でもなく「おとこおんな・・・そのもの」と言うべきでしょう。嗚呼...羞かし!

     

 たぶん妻が大笑いしたのは・・・漱石ファンの芸妓「金ちゃん」こと金之助が宿を訪れる場面。金ちゃんは漱石を『なんぞ日本語の上手な西洋人のおじいちゃんのような感じ』とか『先生が便所に行かはったら、ついて行って おいど拭いてあげたいくらいや』(写真下)
 ※ 金ちゃん役の鈴木杏、宮沢りえより存在感がありました。なお「金之助」は漱石の本名でもあります。

     

 多佳が請われて踊ったの舞は「黒髪」。愛しい男に棄てられた女の哀しみを歌い舞う、いわゆる「艶物」の地唄舞です。年々艶っぽくなる宮沢りえさんの舞(写真下)は絶品ながら、この物語の伏線としてはよくわかりません。以下はその歌詞 ⇒ 黒髪の結ばれたる思いをば/解けて寝た夜の枕こそ/独り寝る夜の仇枕/袖は片敷く妻じゃと言うて/愚痴な女の心と知らで/しんと更けたる鐘の声/夕べの夢の今朝覚めて/ゆかし懐かしやるせなや/積もると知らで積もる白雪」

     

 「北野(天満宮)で梅見する」と多佳と交わした約束を反古にされた漱石は怒りで体調を崩し置屋に二晩逗留します。一応?仲直りした二人が襖越しに寝るシーンが写真下。前記「春の川を隔てて男女かな」の句の「春の川」を「襖」にすればピタリ!はまります。

     

 写真下は多佳の日記帳。多佳の知らぬ間に漱石が読みます。ここらが前記の舞「黒髪」を若干!連想させます。そして何気もなく立ち去ります。江戸っ子の漱石は京都人から見れば「野暮」に描かれるのですが、この場面はなかなか粋と風流を解する漱石でした。

     

 で、それとなく気分転換に出かけてたことを思わせるのが写真下のシーンでしょうか。たぶん高瀬川のあたりと思われますが、この川底の浅さは現在の高瀬川、当時の高瀬川はもう少し深く、森鴎外「高瀬舟」が浮かび通れるぐらいの深さであったでしょうねぇ。

     

 この物語で、漱石付きの女中「梅」を演じる女優さん(写真下)、短い台詞の遣り取りがなかなか面白く、存在感がありました。私はぜんぜん存じませんでしたが、タイトルバックで見ると「犬山イヌコ」とありました。関西演劇界の結構!広い畑を思いました。

     

 もっと長く逗留する予定の漱石が29日で切上げ東京へ帰ります。その後、漱石から芸妓の金ちゃんには漱石のサイン入り近著「硝子戸の中」が届きますが、多佳には届きません。多佳がそのことを手紙に書くと、漱石の癇癪(カンシヤク)じみた返事が届きます。

     

 漱石はまだ「北野の梅見」の約束を反古にされたことをイジイジ?と根にもっていたようです。ロンドンで患った神経症、もしかすればパラノイア(偏執症)の傾向もあったのではないでしょうか。それとも、やっぱり?ただの野暮!が出たと言うべきでしょうか?

     

 まあ、そんなところ・・・です。私も含めて漱石ファンのためにお断りをしておきますと、番組の最後に、「これは漱石の日記や書簡をもとに多少の妄想を加えたフィクションです」と。滅っ茶苦茶!面白かったのですが、番組を視てもらうのが一番ですね。
 ※ 明12日(日)午後1:30~3:00、BS103で再放送されます。興味のある方はご覧下さい。

     

  にほんブログ村 病気ブログ 腎臓がんへ 

 【過去ログ目次一覧】
 吾輩も猫である~40 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/58089c94db4126a1a491cd041749d5d4
 吾輩も猫である~80 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/dce7073c79b759aa9bc0707e4cf68e12
 吾輩も猫である81~ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/f9672339825ecefa5d005066d046646f
 かんわきゅうだい  http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a0b140d3616d89f2b5ea42346a7d80f0
 閑話休題 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/c859a3480d132510c809d930cb326dfb
 腎がんのメモリー http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/bee90bf51656b2d38e95ee9c0a8dd9d2
 旅行記 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/23d5db550b4853853d7e1a59dbea4b8e
 新聞・TV・映画etc. http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a7126ea61f3deb897e01ced6b3955ace
 ごあいさつ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/7de1dfba556d627571b3a76d739e5d8c

Viewing all articles
Browse latest Browse all 587

Trending Articles