「旅のチカラ」というBSの番組を憶えていますか? その中で印象的だった加古隆「パリは未だ燃えているか」(2013.2.12オンエア) の再放送を視ました。作曲家、ピアニストとして40周年を迎えた2013年、かつて学んだパリ高等音楽院(1971~76年)を訪ねる旅でした。
加古は、東京芸大(大学院)を修了後、国費留学生としてパリ高等音楽院に留学、"現代音楽の巨星" と称されるオリヴィエ・メシアン教授に師事します。教授に挨拶すると『何か作品をもってきていますか?』と問われ、持参していた自信作の楽譜を差し出します。
教授は楽譜を見て『とても良く出来ています』『でも30年前のスタイルですね』。これにショックを受けている彼に更に『あなたの今現在の音楽を見つけなさい』『加古さん。あなたが日本人であることは大変な財産です。そのことを深く考えてください』と。
左から3人目が加古隆、5人目がメシアン教授、6人目はミカエル・レヴィナス(現)教授
高等音楽院を訪ね、かつての級友ミカエル・レヴィナス教授に会います。加古を彼の教室の学生に紹介し、併せてかつてメシアン教授が加古に送った言葉を紹介します。
『すべての音楽作品には、そこにあなたへのメッセージが含まれています。どの作品にも、あなただけに聴こえて、他の人には聴こえない何かがあります』『ぼくは不安になったとき、今でも、メシアン教授が君に送ったそのメッセージを思い出します』と。
加古はやがてフリージャズの世界にのめりこみ講義を欠席しがちになります。もともとジャズが好きだった加古は留学に際しジャズを封印していたのですが、級友たちと少し距離を置いていたモーラ・グークと親しく話す中で眠っていたジャズ魂が覚醒します。
加古の演奏をみつめるモーラは性転換の手術を受け 現在は女性です。
その頃、モーラは既にジャズ評論を執筆し、モダンジャズを代表するサックス奏者ジョン・コルトレーンについて熱く語りました。その影響でジャズと現代音楽の融合を目指した加古は「君がいなければ現在の僕はない」モーラのためにピアノ曲を演奏します。
加古が弾いたのは "グリーンスリーブス" から着想した「ポエジー」… "静と動" が交錯します。
加古隆が留学した1971~76年。60年代末期からパリに押し寄せた変革の波 "五月革命" は、加古の留学中もなおパリの街にその息吹を残し、映画「パリは燃えているか」がヒットしていました。そんな時代の風を背に加古が出逢ったのがフリージャズでした。
※ 「パリは燃えているか」… 独軍のパリ撤退時に出された街の破壊命令を独軍将校がスポイル。
独軍本部から「パリは燃えているか?」の電信がパリ駐留独軍司令部に打ち続けられます。
警官隊にジュラルミンの盾はなく 学生の表情と装い?にも或る種の香りが感じられます。
この時代、フランス革命に由来するパリの伝統行事「パリ祭」にちなみ日本の大学に出現したのが「バリ祭」… バリケードストライキ。パリの街と学生のような薫りはなく、ジャンヌ・ダルクは現れず知性を欠くヘルメットと鉄パイプの無粋なお祭りではありました。
三色旗を掲げる女性はちょっとミレーユ・ダルクっぽく、男性が肩車してるんですよねぇ…。
加古のパリ再訪の目的の一つは彼の作曲した四重奏曲を高等音楽院の若い学生に演奏して貰うこと。カフェに居合わせた学生に提案すると「喜んで!」と引き受けて貰いました。クラシックを学ぶ学生達でしたが、音楽院OBの日本の作曲家に惹かれたのでしょうか。
作品は「パリは燃えているか」。この曲は、二十世紀の貴重な映像を記録し放送する NHKスペシャル "映像の世紀" のメインテーマとして知られます。加古のパリ留学時代の若者の息吹を彷彿とさせる名曲…彼自身を含むクァルテットの演奏でお聴きください。
【過去ログ目次一覧】
吾輩も猫である~40 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/58089c94db4126a1a491cd041749d5d4
吾輩も猫である~80 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/dce7073c79b759aa9bc0707e4cf68e12
吾輩も猫である81~140 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/f9672339825ecefa5d005066d046646f
吾輩も猫である141~ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/b7b2d192a4131e73906057aa293895ef
人生の棚卸し http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/ddab58eb8da23a114e2001749326f1f1
人生の棚卸し(2) https://blog.goo.ne.jp/00003193/e/22b3ffae8d0b390afee667c0e9ed92ed
かんわきゅうだい(57~) http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/20297d22fcd28bacdddc1cf81778d34b
かんわきゅうだい(~56) http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a0b140d3616d89f2b5ea42346a7d80f0
閑話休題 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/c859a3480d132510c809d930cb326dfb
腎がんのメモリー http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/bee90bf51656b2d38e95ee9c0a8dd9d2
旅行記 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/23d5db550b4853853d7e1a59dbea4b8e
新聞・TV・映画etc. http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a7126ea61f3deb897e01ced6b3955ace
ごあいさつ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/7de1dfba556d627571b3a76d739e5d8c
加古は、東京芸大(大学院)を修了後、国費留学生としてパリ高等音楽院に留学、"現代音楽の巨星" と称されるオリヴィエ・メシアン教授に師事します。教授に挨拶すると『何か作品をもってきていますか?』と問われ、持参していた自信作の楽譜を差し出します。
教授は楽譜を見て『とても良く出来ています』『でも30年前のスタイルですね』。これにショックを受けている彼に更に『あなたの今現在の音楽を見つけなさい』『加古さん。あなたが日本人であることは大変な財産です。そのことを深く考えてください』と。
左から3人目が加古隆、5人目がメシアン教授、6人目はミカエル・レヴィナス(現)教授
高等音楽院を訪ね、かつての級友ミカエル・レヴィナス教授に会います。加古を彼の教室の学生に紹介し、併せてかつてメシアン教授が加古に送った言葉を紹介します。
『すべての音楽作品には、そこにあなたへのメッセージが含まれています。どの作品にも、あなただけに聴こえて、他の人には聴こえない何かがあります』『ぼくは不安になったとき、今でも、メシアン教授が君に送ったそのメッセージを思い出します』と。
加古はやがてフリージャズの世界にのめりこみ講義を欠席しがちになります。もともとジャズが好きだった加古は留学に際しジャズを封印していたのですが、級友たちと少し距離を置いていたモーラ・グークと親しく話す中で眠っていたジャズ魂が覚醒します。
加古の演奏をみつめるモーラは性転換の手術を受け 現在は女性です。
その頃、モーラは既にジャズ評論を執筆し、モダンジャズを代表するサックス奏者ジョン・コルトレーンについて熱く語りました。その影響でジャズと現代音楽の融合を目指した加古は「君がいなければ現在の僕はない」モーラのためにピアノ曲を演奏します。
加古が弾いたのは "グリーンスリーブス" から着想した「ポエジー」… "静と動" が交錯します。
加古隆が留学した1971~76年。60年代末期からパリに押し寄せた変革の波 "五月革命" は、加古の留学中もなおパリの街にその息吹を残し、映画「パリは燃えているか」がヒットしていました。そんな時代の風を背に加古が出逢ったのがフリージャズでした。
※ 「パリは燃えているか」… 独軍のパリ撤退時に出された街の破壊命令を独軍将校がスポイル。
独軍本部から「パリは燃えているか?」の電信がパリ駐留独軍司令部に打ち続けられます。
警官隊にジュラルミンの盾はなく 学生の表情と装い?にも或る種の香りが感じられます。
この時代、フランス革命に由来するパリの伝統行事「パリ祭」にちなみ日本の大学に出現したのが「バリ祭」… バリケードストライキ。パリの街と学生のような薫りはなく、ジャンヌ・ダルクは現れず知性を欠くヘルメットと鉄パイプの無粋なお祭りではありました。
三色旗を掲げる女性はちょっとミレーユ・ダルクっぽく、男性が肩車してるんですよねぇ…。
加古のパリ再訪の目的の一つは彼の作曲した四重奏曲を高等音楽院の若い学生に演奏して貰うこと。カフェに居合わせた学生に提案すると「喜んで!」と引き受けて貰いました。クラシックを学ぶ学生達でしたが、音楽院OBの日本の作曲家に惹かれたのでしょうか。
作品は「パリは燃えているか」。この曲は、二十世紀の貴重な映像を記録し放送する NHKスペシャル "映像の世紀" のメインテーマとして知られます。加古のパリ留学時代の若者の息吹を彷彿とさせる名曲…彼自身を含むクァルテットの演奏でお聴きください。
【過去ログ目次一覧】
吾輩も猫である~40 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/58089c94db4126a1a491cd041749d5d4
吾輩も猫である~80 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/dce7073c79b759aa9bc0707e4cf68e12
吾輩も猫である81~140 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/f9672339825ecefa5d005066d046646f
吾輩も猫である141~ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/b7b2d192a4131e73906057aa293895ef
人生の棚卸し http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/ddab58eb8da23a114e2001749326f1f1
人生の棚卸し(2) https://blog.goo.ne.jp/00003193/e/22b3ffae8d0b390afee667c0e9ed92ed
かんわきゅうだい(57~) http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/20297d22fcd28bacdddc1cf81778d34b
かんわきゅうだい(~56) http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a0b140d3616d89f2b5ea42346a7d80f0
閑話休題 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/c859a3480d132510c809d930cb326dfb
腎がんのメモリー http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/bee90bf51656b2d38e95ee9c0a8dd9d2
旅行記 http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/23d5db550b4853853d7e1a59dbea4b8e
新聞・TV・映画etc. http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/a7126ea61f3deb897e01ced6b3955ace
ごあいさつ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/7de1dfba556d627571b3a76d739e5d8c