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Channel: デ某の「ひょっこりポンポン山」
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かんわきゅうだい 3 ( 歓話久題 ) 「 三つの舞台 」

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 10日間に三つの舞台・・・関西二期会によるオペラ「アンドレア・シェニエ」、藤岡幸夫指揮による関西フィルハーモニー「七夕コンサート」、グループる・ばるのお芝居「蜜柑とユウウツ~茨木のり子異聞~」を見ました。それぞれ新鮮な驚きと心を激しく揺さぶる刺戟あふれる公演でした。



 関西二期会のオペラ「アンドレア・シェニエ」
 
 フランス革命を舞台とした実在の詩人の恋と死を描く全4幕のオペラは、イタリア人(U.ジョルダーノ)の作曲でイタリア語で上演されます。日本人の感覚にはやや違和感がありますが、イタリアを舞台とした「ヴェニスの商人」が英国のシェークスピアの作品であることと同様かと・・・。

 日本で創られる多くは室内オペラで、「ボリューム感を欠く」印象がありました。しかしこの本格的なオペラの舞台は、指揮・演出こそイタリア人ながらオケも出演者も総て日本製(笑)。日本の(関西の)オペラってこんなにも水準が高く力感あふれるものだったのかと、不明を愧じました。

 ソリストはいずれもオーケストラに伍し都度に期せずして拍手と歓声を呼びました。群衆を兼ねた合唱の三十余人も特筆すべき自然で豊かなアンサンブルでした。公演後の打上げでは、ソリストはじめ総ての人の表情に満足感、達成感が顕れていたことが公演の成功を如実に物語っていました。

 関西フィル・・・チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲(作品35)」

 曲目はロッシーニ「アルジェのイタリア女」(序曲)、チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」、ベートーヴェン「交響曲Ⅵ:田園」。所用のため「田園」が聴けなくて残念でしたが、公開されたゲネプロ(リハーサル)から聴くことができ、公演では得がたい貴重な機会に感謝!でした。

 ゲネプロではいきなりハンガリー舞曲。え?曲目にありませんけど・・・アンコールに応えるためと聞きナットク(笑)。「田園」は指揮者の藤岡さんが「好きだから」。ちなみに1~9番では「5番(運命)はやりたくない」「指揮者も奏者もぎりぎりまで追込まないと演奏できないから」と。

 このヴァイオリン協奏曲は誰もが一度は聴いたことのある屈指の名曲。関フィルと初共演の川久保賜紀さんは、主旋律を繰返しつつつ烈しさと甘い旋律が要所に散りばめられたこの曲が「好きでたまらない」演奏ぶりでした。前記アンコール曲は、この曲のスラブ的な雰囲気にあわせてか・・・(笑)     

 三つの舞台で最も印象的であった「蜜柑とユウウツ~茨木のり子異聞~」

 松金よね子、岡本麗、田岡美也子の三女優が主宰する劇団「る・ばる」公演は、この日が全国公演の千秋楽。三人は「超民主主義」で、三人が一致しないとどんな企画も実現しないのだそうです。詩人「茨木のり子」は三人がすぐ一致し長田育恵に脚本を、マキノノゾミに演出を依頼した由。

 私にとっていわゆる「現代演劇」の公演は四十数年ぶり、ブレヒト作「三文オペラ」(青年座:京都会館)以来です。泉晶子さんの際立つ美しさが今も印象に残ります。対して三人の老獪な?女優さん・・・正直!期待していませんでしたが、「チケット完売」と聞き俄かに興味を持ちました(笑)

 それにしても55歳のマキノノゾミが演出を依頼されるまで「茨木のり子を知らなかった」とは意外でした。「知ってる」とか「知らない」ってことは案外!そんなことなのかもしれませんね。でも演出家が「知らなかった」感受性?が、この芝居を輝かせた隠し味だったのかも知れません。

      

 劇中に詩「いまはじまる新しいいま」を書いた川崎洋※、詩「死んだ男の残したものは」の谷川俊太郎らが登場する場面は、不思議なほどキラキラ輝いていました。そして場面々々の狭間に朗読される詩のなんと心に響くこと・・・詩とはこんなにも輝き心を躍らせるものだったのでしょうか・・・。
   ※「吾輩も・・・45」で少し・・・⇒ http://blog.goo.ne.jp/00003193/e/0621c00242bb3b892ff807130afba7dc 

 『死んだ男の残したものは/一人の妻と一人の子供
     他には何も残さなかった/墓石ひとつ残さなかった
  死んだ女の残したものは/しおれた花と一人の子供
     他には何も残さなかった/着物一枚残さなかった
  死んだ子供の残したものは/ねじれた足とかわいた涙
     他には何も残さなかった/思い出ひとつ残さなかった
  死んだ兵士の残したものは/こわれた銃とゆがんだ地球
     他には何も残さなかった/平和ひとつ残せなかった
  死んだ彼らの残したものは/生きてる私 生きてるあなた
     他には誰も残っていない/他には誰も残っていない
  死んだ歴史の残したものは/輝く今日とまた来る明日/
     他には何も残っていない/他には何も残っていない』

 劇中・・・あの頃!を語る時、「アンポハンタイ!キシヲタオセ!」と叫ぶデモの音声が幻のように流れます。現総理の祖父である当時の「岸」総理、当時の「60年安保(条約)」と現総理がひた走る「安保法制」・・・半世紀余を経た「二つの戦後」が「新しい戦」を呼ぶことのなきように・・・。

 本田路津子「死んだ男の残したものは」


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